プロ注目右腕、柳ケ浦(大分)の田中瑛斗投手(3年)が、熱投で劇的勝利をもたらした。延長11回、6安打1失点完投勝利。最後は2番打者の徳田馨外野手(3年)のサヨナラ2ランが飛び出し「まさかホームランを打ってくれるとは。あいつにはいつも助けられているんです」と笑みをこぼした。

 バックネット裏には国内10球団のスカウトが顔を並べた。注目の初回、いきなり2死二、三塁のピンチを迎えたが、自己最速を更新する147キロの直球で見逃し三振を奪ってみせた。「決めにいこうと思って投げたら、思ったより腕が振れた」。初めての夏マウンドで注目を浴びる緊張感もあるなか、能力の高さをしっかりアピールした。2回に1点は奪われたが、焦りはなかった。「(8回に)同点に追いついてくれてみんなが頑張っているので、自分がスタミナ切れになるのはみっともないと思った」。141球。プロ注目右腕のプライドにかけて、3回以降最後まで0行進を続けた。

 スカウト陣も高評価だった。DeNAは高田GMも観戦するほどで、高田GMは「あれだけいい球が投げられているのでね」と満足そうだった。

 元南海内野手の定岡智秋監督(64)にとっては就任2年目で初めての夏勝利。「いい投手がいるときに甲子園に行きたい。しんどかったけど次に勢いをつけたい」と孝行息子に目を細めた。その定岡監督から「ダルビッシュの雰囲気がある」と言われる田中も「憧れの甲子園まで1人で投げ抜きたい」とキッパリ。「大分のダル」が、またひとつ大きくなった。【浦田由紀夫】