うれしくて涙が出た。ミラクル劇を完結させた折尾愛真の平戸航貴捕手(3年)が、ナインの待つホーム付近で感極まった。5点ビハインドの9回裏に4点を返し、なおも2死満塁。「自分が決めてやる」。右中間へサヨナラ2点適時二塁打を放ち「みんながつないでくれたので、気持ちで打てました」。今センバツ8強の東海大福岡を倒す「徳俵」からの奇跡に言葉も弾んだ。

 昨秋4回戦、東海大福岡を1点リードしながら9回に追いつかれ、延長戦の末にサヨナラ負け。その悔しさを胸にこの夏を迎えていた。9回2死一塁で8番打者から4連打。敵失、四球で平戸につないだ。奥野博之監督(47)は「選手がよく頑張ってくれた。何があるか分かりませんね」。今年3月からメンタルトレーニングを導入。「否定文を肯定文にするところから始め、今ではすべてが前向きに考えられるようになった」(平戸)。誰も「負け」の2文字は頭になかった。

 夏4回戦の対戦が決まると、サヨナラ負けしないように上杉拓滉(たくひろ)主将(3年)は後攻を選ぶことを決意。実際にじゃんけんに勝ち、劇的勝利につなげた。昨秋は東海大福岡の左打者に打たれた反省から、この日を見据え大会前から左腕のみ4人を登録した。すべて、この日のための準備だった。3番手として6回途中から無失点に抑えた平田悠介投手(3年)は「東海大福岡の分まで頑張って甲子園に行きたい」と頂点に立つことを誓った。