大船渡東が宮古に競り勝ち、盛岡大付、盛岡四、久慈に続くベスト4最後の切符を手にした。「3試合連続で1回表に先制」で迎えたこの日の準々決勝も、5番尾崎龍捕手(3年)の2点適時打などで3点を先制。理想の電光石火の攻撃を実現させ、試合を優位に進めた。

 岩手県沿岸地区の高校が夏4強に進出するのは、2006年の大船渡以来。11年3月の東日本大震災以降では初めてのことになる。同校がある大船渡市も甚大な被害を受けた。海沿いの赤崎地区、末崎地区などで育ったメンバーが多く、中学3年間を仮設校舎で学んだ選手もいる。

 この日、7回から好リリーフした佐藤飛勇投手(3年)は、父が営む洋菓子店「西欧菓子 ロレーヌ」の店舗が大津波で全壊した(現在は再建)。「当時は小学生。ショックでした。置いていたランドセルも流されてしまいました」という。「今でもボランティアの方々には本当に感謝しています」と振り返る。 

 震災から6年4カ月、2300日以上が過ぎた。それぞれがいろいろな思いを胸の奥底に秘めながら、グラウンドでは笑顔で野球を楽しむ。公式戦の試合前にはベンチ前で、ランダムで選ばれた3名が声出しをする。エース岩城大夢投手(3年)は「あれで盛り上がるのがルーティンです」と確信する。

 チームの流れは最高潮。創部10年目にして、甲子園まであと2勝に迫った。就任1年目の眞下徹監督(54)は「沿岸代表で決勝に行けるように頑張りたい」と、再び沿岸対決となる準決勝(21日)の久慈戦に力を込めた。