南北海道大会は準決勝2試合を行い、東海大札幌が函館工を9-4で下し、前回優勝した14年以来3年ぶりの決勝進出を決めた。4番唐川治也(2年)が3回無死満塁から右越え逆転満塁本塁打を放ち、勝利を呼び込んだ。全国最多38度目の夏の甲子園出場を狙う北海は、札幌大谷を11-4の7回コールドで下し、3連覇へ王手をかけた。今日23日、札幌円山球場で決勝を行う。

 鬱憤(うっぷん)晴らしの1発が出た。1-2の3回無死満塁、唐川は5秒間バットをみつめてから打席に立った。「秋の大会のとき、あれで無心になれたので、思い出してやってみました」。精神統一し、函館工の横手エース加藤の3球目、ど真ん中直球を迷うことなく振り抜き、右翼スタンドへ運んだ。

 2回戦まで5打数無安打。試合前日、実家の旭川の父に電話で泣きついた。「このままじゃテレビ中継で、(打率)0割0分0厘って放送されちゃうよ」。それを聞いた父幸治さん(46)は優しくカツを入れた。「ここまでの試合なんか気にするな。次打てばいいじゃないか」。シンプルな助言で開き直ると、グランドスラムでの公式戦初本塁打と、最高の形で恩返しを果たした。

 父幸治さんは旭川実3年時の89年夏、北大会2回戦で敗れ甲子園を逃した。「甲子園出場こそが唐川家の夢」と言う。20日の準々決勝北海道栄戦後はチーム練習後、高校近くの公園で息子にマンツーマン指導。「下半身が使えてない。内転筋を締めろ」と、癖を熟知する父の指摘も、大きな打撃改善につながった。

 「一番信頼する存在。その父の夢を果たしたい」。15年春のセンバツ準優勝を見て感動し「強いところで鍛えて甲子園に出たい」と、親元を離れ旭川から札幌の高校に進学したが、ほぼ毎日電話をし、動画を送っては助言をもらってきた。あと1勝。真の恩返しを果たすには、1発では終われない。【永野高輔】