甲子園の土を2度踏んだ男がチームを救った。北海の左腕、多間隼介(3年)が、東海大札幌に5点を先制された後の3回1死一塁から登板。6回2/3のロングリリーフで3安打無失点と好投した。同点の9回には自ら決勝打を放った。

 夢中で走った。わずか1点リードの9回裏2死一塁。多間は最後の打者を一ゴロに仕留めた。ベースカバーに入り、自らたたき出した決勝の1点を守り切ると、両腕を上げガッツポーズした。1年夏からベンチ入りし、これで3年連続甲子園。「これまでは先輩に連れてってもらった。今回は貢献できてうれしい」と胸を張った。

 完璧な仕事ぶりだった。先発の阪口が打ち込まれて初回に5失点。3回1死一塁からマウンドに上がると、最後までロングリリーフした。制球力抜群の左腕はスライダー、チェンジアップを低めに集め無失点。さらに同点の9回表無死二塁から「何とか食らいついてゴロを意識した」と、左前に決勝適時打を放った。南大会4試合すべて救援で計10回2/3を投げ無失点。投球回数は多くない。ピンチの場面でいつもチームを救った。平川監督は「多間につきる。経験があるから、厳しい場面を任せられる」とたたえた。

 過去2度の甲子園で「キレのある球は通用する」と実感した。自分らしい投球をすれば勝てると信じて1年間練習を積んだ。この春、左肩痛で満足な投球ができなかった。阪口を良きライバルとして、悔しさを胸に押し込み、最後の夏に臨んだ。「肩が壊れてもいい。悔いが残らない全力投球がしたい」。V3に向けて気合は誰よりも入っていた。

 11年センバツで8強入りした兄泰介さん(24)の背中を追って、紋別から古豪に飛び込んだ。昨夏甲子園は決勝の救援登板だけだった。「次も自分の投球をしたい」。昨年の全国準V超えを胸に秘めて。【西塚祐司】