久慈は盛岡大付の強力打線に屈し、38年ぶりの優勝はならなかった。

 盛岡大付の先発右腕、平松竜也投手(3年)の速球とスライダーに、6回まで11三振。そのうち9個を、右打者が奪われた。7回から登板した左腕・三浦瑞樹投手(3年)には一転、左打者が苦しんだ。散発4安打で完封された。

 久慈はこの日のスタメン9人のうち、6人が久慈市立久慈中学校の出身。中学県大会で優勝したメンバーの多くが、そのまま地元校に進学した。「地元校だから、限られたメンバーの中で勝つためにはどうすればいいか、それを考えて練習、挑戦してきました」と、久慈の3番打者・高柳涼選手(3年)と話す。

 久慈中の優勝メンバーは、甲子園をかけて戦った盛岡大付にもいた。松田夏生捕手(3年)。4打数4安打2打点と打ち込まれた。「ホームランもタイムリーも打たれて、あいつにとどめを刺されたみたいな感じですね…」と高柳は涙をこらえ、苦笑いした。

 高柳は「やられて悔しいのもあるけれど」と言い、続けて中学卒業時を回想した。「あいつも覚悟をもって、盛岡大付に行った。甲子園をかけた舞台で戦おうと約束した仲だったので、決勝で試合をできたのはよかった。自分たちも3年間で成長できました」と少し胸を張った。

 甲子園が決まった松田は、試合終了の整列後、目の前にいた久慈中出身の水上綜駿選手(3年)と抱き合った。「久慈のみんなの分まで甲子園で頑張りたい」。地元の期待を背負って戦う松田は、学校での優勝報告会で「何としてでも全国制覇します。以上です」と一言きっぱり、宣言した。