県勢初3季連続甲子園出場の盛岡大付(岩手)が夏連覇を狙う作新学院(栃木)を4-1で下し、2回戦に進出した。1-1の5回1死一、三塁から相手投手の暴投で勝ち越し、その後は主将の4番比嘉賢伸内野手(3年)のフェンス直撃中越え二塁打で2点を加えた。9回は平松竜也投手(3年)が3四死球で満塁のピンチを招き、起伏の激しい「盛付(もりふ)劇場」は健在だったが、押し切った。東北勢の先陣は10年の八戸工大一(青森)に始まり8連勝となった。

 力のない飛球が右翼手のグラブに収まった瞬間、比嘉は右手でガッツポーズをつくって平松に駆け寄った。4-1で完勝ペースの9回2死から、平松が制球を乱し3四死球で満塁となったが、最後は踏みとどまった。3度目の聖地となった精神的支柱の比嘉は、余裕の表情で振り返った。

 「正直焦りはあったけど、3点差は大きかった。ああいう場面は何度も経験しているし、自分は甲子園で7試合もやっている。平松もよく投げた。みんなで勝ち取った勝利」

 比嘉のバットが勝利をたぐり寄せた。暴投で1点勝ち越して迎えた5回2死一、二塁。初球、外角高めの131キロ直球をしばき上げると、打球はぐんぐん伸びてバックスクリーン右寄りのフェンス金網に直撃。あと数十センチで本塁打だった。「ボール球を振らないで、ストライクゾーンに入ってきた球をしっかり振れた。詰まったけど、伸びてくれた」。最初の打席で直球に詰まって二飛に終わってからは、直球1本で待っていた。相手の決め球を狙い打つ完璧な当たりで、作新の夏連覇を阻止した。

 天国にいる「じいちゃん」のために打った。大阪に住む祖父武一さんが3日に75歳で息を引き取った。比嘉はおじいちゃん子で、子供のころからキャッチボールの相手をしてくれた。一時的に宿舎を抜け出し、亡き祖父と対面を果たしたが、すぐにチームの元へ戻って通夜と告別式は欠席した。悲しむ姿をメンバーの前で見せず、気丈に振る舞い、あくまでチームを最優先した。スタンドで息子の快打を見届けた父武博さん(47)は肩を震わせていた。

 「じいちゃんが打たせてくれた。仮に父が生きていても、チームをまとめるのが主将なんだから(葬儀に)来るなと、突き返していたと思う」