「ミレニアム世代」の新星が登場した。神戸国際大付(兵庫)が、5-4で昨夏準優勝の北海(南北海道)を破った。2年生の谷口嘉紀外野手が6回に同点弾、再びビハインドで迎えた7回には逆転3ラン。大会史上32人目(34度目)となる2打席連発の活躍で、同校を夏初勝利に導いた。

 夢だった舞台で2度、願いをかなえた。2年生の6番谷口が、左へ右へ、2打席連発で敗戦の危機から救った。まずは1点を追う6回だ。初球を強振すると、打球は左翼席に突き刺さった。起死回生の同点弾。「完璧でした。打った瞬間は夢かなと思った。不思議な感じ」。聖地に響き渡る大歓声を背に受け、ダイヤモンドを駆け抜けた。

 再びスタンドを揺らす場面は、すぐにやってきた。今度は2点を追う7回1死一、三塁。外角の直球をはじき返すと、打球は右翼ポール付近に吸い込まれた。逆転3ランだ。「自分でもビックリしてます。前の打席で(本塁打を)打っていたので、狙わないようにしていた」。右方向へのアーチは人生初。「練習から(左腕の)花村さん(3年)が投げてくれて。抽選で相手が決まったときから準備していた」。昨夏準Vメンバーであるサウスポーの北海・多間から、逆境で2度も劇的アーチを運んでみせた。今春センバツでは無安打に終わっていたが、甲子園でアーチをかけ「小さいころからの夢がかなった」と笑みを浮かべた。

 連発の裏には、先輩からの助言があった。6回の1発の直前、高校通算28発の4番猪田から言われた。「足上げすぎ。そんなに上げなくていい」。夜は一緒に素振りをする“師匠”の声で、心が落ち着いた。昨秋の近畿大会準決勝(大阪桐蔭戦)で代打アーチを放ってから、レギュラーにのぼりつめた。筋金入りの勝負強さを大舞台で発揮した。

 神戸国際大付にとっては、2度目の夏で初勝利となった。青木尚龍監督(52)は言った。「(谷口は)元々、力のある子です。選手みんなが、このままでは終われないという気持ちで戦ってくれた。感謝です。ありがとう」。立役者となった谷口は2000年生まれの「ミレニアム世代」。多くの才能ある選手が集う世代に“超新星”が現れた。【真柴健】

 ◆谷口嘉紀(たにぐち・よしき)2000年(平12)11月11日生まれ、兵庫・丹波市出身。小学2年から「柏原スターズ」で投手で野球を始めた。中学は「氷上ボーイズ」に所属。神戸国際大付では1年秋から背番号17でベンチ入り。2年春から背番号8。趣味はボウリング。中学時代は陸上の県大会で200メートル8位入賞。50メートル6秒1。遠投110メートル。177センチ、76キロ。右投げ右打ち。母と兄2人。

 ◆2打席連続本塁打 神戸国際大付・谷口が記録。15年に長嶋(関東第一)が2試合にまたがって記録して以来で、大会通算32人目(34度目)。48年の学制改革後、2年生は6人目。谷口は同点、逆転本塁打。先制、同点などの殊勲本塁打を続けたのは4人目で、2年生では史上初めて。