19年ぶり3度目出場の滝川西(北北海道)は仙台育英から意地の3点をもぎ取るも、15年準優勝チームに3-15と完敗、甲子園初勝利はならなかった。

 最後まであきらめなかった。0-12の7回2死満塁。9番竹原陸二塁手(3年)が直球を強振すると、打球は右翼手の頭を越えた。走者一掃の適時二塁打。打席に向かう時、満員4万7000人のスタンドから温かい拍手が降り注いだ。「チャンスなので絶対走者をかえしたかった。すごく力になった」。滝川市の人口より多いスタンドの声援に後押しされ、一矢報いた。

 いきなり主導権を握られた。初回1死二塁で2ラン、2回無死一、三塁には3ランを打たれた。経験したことがない試合展開に焦りが出た。打線は初回から4回連続で先頭打者を出すが、送りバントを失敗。二塁まで進められず、リズムに乗れなかった。堀田将人主将(3年)は「いつも通りの野球はできたが、ミスの後に切り替えることができなかった」と振り返った。

 恩返しのプレーを忘れなかった。ほぼ地元選手で構成されるチームに、滝川市はもちろん、周辺市町村からも協賛金が贈られた。決戦前日の食卓には「仙台を食う」という意味で名物の牛タンや笹(ささ)かまぼこが並んだ。小野寺大樹監督(41)は「甲子園に来て選手はさまざまな人との関わり、感謝の気持ちを持つことで成長した」。モットーの全力疾走と笑顔でのプレー。どんなに点差が離れても最後まで貫いた。ひたむきな姿はスタンドの高校野球ファンの胸を打った。

 春夏通算4度目での甲子園初勝利はならなかった。だが道勢公立校として5年ぶり、チームとして19年ぶりに聖地にたどり着いた。「満員の中プレーできたのはすごく良い経験。次のチームも頑張って欲しい」と堀田主将。さわやかな風を吹かせたスカイブルー軍団は、必ず甲子園に戻ってくる。【西塚祐司】