「銀河系スター軍団」が史上3校目の春2連覇へ好発進だ。4番・藤原恭大中堅手(3年)含む6人のドラフト候補を擁する大阪桐蔭が20安打14得点で、21世紀枠出場の伊万里(佐賀)に大勝。大会タイ記録となる8人がマルチ安打を放った。21世紀枠3校は全て初戦敗退した。

 一塁を蹴った瞬間、迷わず二塁を目指した。6-0で迎えた2回1死一塁。藤原の打球が一、二塁間を破った。下がっていた伊万里の右翼手が前に出てきながら右翼線寄りで処理する間、藤原はスピードを緩めず、最後は右足でスライディング。二塁へ到達すると笑みがこぼれた。「なかなか打ってなかったので安心したのと、(ケガしていた)右で滑ってしまい、笑ってしまいました」。大会前には負担が少ない左足でのスライディング練習を重ねてきた。足の状態の良さと相まって、思わず右足が出た。自身が「8割くらい」という走力でも、右前二塁打。観客やスカウトを魅了するには十分だった。

 昨年10月に痛めたのは右足の膝窩筋(しっかきん)。なかなか痛めることのない箇所。下半身のパワーが強すぎ、まだ体がついていけなかった。最終学年を迎える冬は、もどかしい時間を過ごした。完治していなかったが「全力で走れます」と焦る藤原を抑えたのは、西谷浩一監督(48)。「焦ったらいけない。今無理して、この後に響いてきたら」。今センバツと夏を見据えての判断だった。

 この日も西谷監督は足を生かせる1番ではなく公式戦では初となる4番に据えた。ランナーコーチも「際どいところは回さない」と試合前に打ち合わせていた。だが、抜群の身体能力と野球センスを誇る藤原は、聖地で鮮やかに復調を印象づけた。

 打撃も5打数2安打。4回は右前安打を放ち、この回4得点の軸となった。「振れないところもあったのでまだまだだけど、今日は自分的にはいいバッティングができた」。ドラフト候補を6人抱えるスター軍団。ノーアーチながら14得点を重ねるなど、1発ではなく、つなぎの野球が史上3校目の春連覇を狙う大阪桐蔭の攻撃スタイル。まさに、その象徴が藤原だ。

 大事を取って7回での交代となったが、西谷監督は言った。「やっぱり藤原の力が必要。1番(打者)もいけるんじゃないかと。チーム状態を見て打順を組みたい」。本職「1番センター藤原」の復活も間近だ。【磯綾乃】

 ◆藤原恭大(ふじわら・きょうた)2000年(平12)5月6日、大阪府生まれ。小1から野球を始める。豊中市立第五中では枚方ボーイズに所属し投手兼外野手。大阪桐蔭では1年夏からベンチ入りし、1年秋から背番号「8」を背負う。高校通算21本塁打。50メートル走で5秒台を記録する俊足。遠投105メートル。181センチ、78キロ。左投げ左打ち。