花巻東(岩手)が歴史的なサヨナラ勝ちを収め、9年ぶりの8強進出を決めた。彦根東(滋賀)増居翔太投手(3年)に9回まで無安打に封じられたものの、0-0の延長10回に紺野留斗外野手(3年)のチーム初安打から無死満塁とし、藤森晃希内野手(3年)の中犠飛で勝った。

 花巻東は「タイブレーク対策」が劇的勝利を生んだ。9回無安打で延長突入。10回先頭の紺野が右前に初安打。佐々木洋監督(42)が動いた。「足もあって、バントもうまい。タイブレークのために18人目に入れた」という“タイブレーク要員”の八幡を代打起用。菊池(西武)を擁して準優勝した09年以来の8強を引き寄せた。

 バントの構えで、相手投手がフォームを崩すことを見抜いていた。今大会最小159センチの“刺客”に「あわよくば四球」と、バントの構えで待てのサイン。狙い通りに無死一、二塁の形に成功。シート打撃で走者をつけて、打者も走者も練習してきたタイブレークの舞台を演出した。次の上戸鎖にはバントの指示。見送った初球の守備陣形を見て、上戸鎖は自身の判断でバスターで左前に。「ロボットじゃないんだから、サイン通り動くなと言ってきた。攻守にいろいろなことをやる練習をしてきたおかげ」。新ルールを想定して培った対応力が“本番”前に結実した。

 最後は守備固めで入っていた藤森がサヨナラ中犠飛を放ち「(大谷)翔平さんや(菊池)雄星さんのようなスターがいなくても、組織力ではどこにも負けない」と笑顔。佐々木監督は「藤森も上戸鎖も震災被害にあった子なので、頑張ってくれてうれしい。こういう試合を勝つことがトーナメントでは大事。頼もしい」とたたえた。【鎌田直秀】