北星学園大付が8-1の7回コールドで札幌南陵を下し、初の春全道大会出場へ好発進した。先発のエース杉村航大(3年)が、プロ3球団のスカウトが見守る中、5回4安打10三振と力投。昨秋は最速143キロをマークも、この日の最速は139キロに抑え、制球重視の投球で初戦を突破した。昨秋は連投疲れで地区代表決定戦敗退。自身の体力も想定した、剛より柔の“ネオ杉村”で、09年秋以来25季ぶり道大会を狙う。

 プロ注目腕には不満足な内容だった。初回、2者連続三振でスタートした杉村は4回、先頭打者に四球を与え、続く打者に右前打。1死一、三塁から容易にスクイズで1点を与え「冷静に入ろうとしすぎた。テンポが悪く40~45点」と厳しく自己採点した。より高みを目指すからこそ、完璧な出来を求めたかった。

 昨秋地区3回戦の東海大札幌戦は2回から登板。猛打の相手を8回3失点に抑え勝利に導いたが「試合の後、肩が上がらなくなってしまった」と振り返る。翌日の北広島との代表決定戦は先発回避。4回に登板も制球が乱れ2イニングで交代した。蓄積疲労の中、自分で抑えようと力んだ結果、白星は逃げた。気持ちと体力、双方ともに不足していた。

 冬場はスタミナをつけるため1日120球の投げ込みと、自宅付近で雪道3キロのランニングを自身に課した。さらにこの日の試合前、沼田健吾監督(35)は「気持ちが空回りすることがあるので8割ぐらいの力で投げるように伝えた」と言う。アドバイスを受け、変化球中心にカウントを取り10奪三振のうち、5個が見逃し。剛から柔へのプチ修正に杉村も「コースに決まっていた部分は良かった」と手応えを口にした。

 ひと冬越えた進化に、集まったスカウトも新鮮な印象を口にした。この日は日本ハム、オリックス、楽天の3球団が視察。日本ハム白井スカウトは「元々スライダーは、いいものがある。球速は出なかったが当然、夏までにひと伸びしてくると思う」と期待した。

 昨秋のドラフトでOB山本大貴(22)がロッテ3位指名を受け入団。社会人を経てのプロ入りに「山本さんは社会人でも努力をして夢をつかんだ。僕はまだ力不足。大学に行ってさらに成長して将来はプロで投げてみたい」と口にした。まずは春全道、そして初の甲子園を経由して、未来を切り開く。【永野高輔】