大磯の選手たちは、笑顔でグラウンドを去った。2004年以来となる4回戦進出を目指したが、1歩及ばなかった。

 中2日で先発したエース宮川樹投手(3年)は粘りを見せたが、6回2死から連打を許し、被安打7の5失点で降板した。打線は、藤嶺藤沢の3投手を打ち崩せず、三塁を踏めなかった。

 “大磯旋風”を巻き起こした。1回戦で湘南台に5-1で勝利し、10年ぶりの1勝。2回戦は関東学院を10-6で下し、2006年以来となる同一大会2勝目を挙げた。3回戦進出決定後、寺内大耀主将(3年)は地元のお祭りで「大磯、頑張って!」とたくさん声を掛けられた。この日も、敗退にもかかわらずスタジアムを出ると保護者会をはじめとした観客に盛大な拍手で迎えられた。寺内は「みんなで、最後は笑顔で終わろうと話していたので、それができました。でも、まだ(野球が)終わった実感はないです。明日も、練習があるんじゃないかって思います」と明るく話した。

 昨秋から就任し、初めての夏を終えた窪田祐樹監督(27)は「1年目で、このみんなとやれて良かった。感謝の気持ちです」と話した。

 選手は守備に入る際、自身のポジションに着くと帽子を取り、深々と一礼する。昨秋、失策が多い課題を改善すべく、ルーティンとして取り入れた。監督は「守備面で、メンタルの弱さが出ていた。落ち着ける意味もありますが、感謝の気持ちを表す意味も大きい。自分が野球をできていることに対して、一礼をするということです」と明かした。

 あいさつや、ごみ拾い、荷物をきれいに整理するなど、私生活の部分から見直した。すると指示していないにも関わらず、選手は守備を終え、ベンチに戻る際にもグラウンドへ一礼する習慣がいつの間にかできていた。守備の失策も減り、元気が取りえのチームが、強さを兼ね備えていった。

 寺内は、高校で野球生活に区切りをつけるつもりだ。「大学に進学して、また新しいことに挑戦します」。選手が自分たちで決めたスローガンは、元PL学園監督の中村順司氏の座右の銘である「球道即人道」だった。笑顔で写真撮影をしているチームメートを見ながら「みんなと一緒で楽しかった。人としても、成長できたと思います」と3年間を締めくくった。たくさんの笑顔と、少しの悔しさを抱えて、新たな1歩を踏み出す。