伝統校を引っ張る2年生エースが、夏初戦で無四球完封を飾った。35年ぶり4度目の甲子園を目指す仙台商が、3-0で大河原商を下して3回戦に進出した。エース右腕の佐藤壱海(かずみ)が6安打無四球で完封勝利。炎天下の人工芝で体力消耗も激しい中、108球と球数を理想的にコントロールした。

 心は熱く、でも投球はクールに-。佐藤がメリハリを利かせながら、酷暑の初戦を支配した。初回は11球で3者凡退と快調に立ち上がり、得点圏に走者を背負ったのは2イニングのみ。自身も「あのプレーが大きかった」とポイントに挙げた6回は、2死二塁から遊撃内野安打を許したが、深いゴロを止めた建尾敦内野手(3年)が好判断で三塁に送球。わずかに飛び出した走者を刺した。

 理想的な球数配分だった。イニング別では2回の14球が最多で、3ボールになるカウントは1度もなし。背番号12の横山滋基捕手(3年)と組み、「中学(大沢中)からの先輩。僕のことを分かってくれている」と息も合った。球場は人工芝の照り返しが強く、大河原商の先発4人が熱中症とみられる症状に苦しんだほど。攻撃中はベンチ奥の日陰で涼み、アイシングで頭と顔を冷やし、クエン酸とアミノ酸の栄養剤でエネルギー補給した。

 8回を終えて90球。9回も余力十分で、最後はオール直球勝負の3球三振で締めた。下原俊介監督(47)は「初戦なのか、思うように機能しなかった」と5安打の打線には苦言も、「ファウルの音で聞いたら、球で勝っていた。四球もなくすように伝えていた」と佐藤の好投には目を細めた。

 佐藤は1年秋から背番号1を背負う。今春の県大会2回戦ではサヨナラ負けも、優勝した東北を延長12回、4-5と追い詰めた。投手登録の4人はすべて2年生以下で、投手陣のリーダー役も務める。ストイックな性格らしく、「全然満足していません。あんなに打たれるべき(6安打)ではなかった」と厳しい言葉を並べた。練習試合を含めて初の9回無四球完封にも、「いや、まだまだです。甘えてはいられない」と、どこまでも自分に厳しかった。【中島正好】