ケガの影響で、6月には「再起不能」とまでささやかれた右腕が、マウンドに帰ってきた。プロ注目の中央学院(西千葉)大谷拓海投手(3年)は「4番投手」で先発出場。5月27日の練習試合で右側頭部に打球を受けて以来の実戦のマウンドを踏んだ。

 「真っすぐで押すピッチングを心がけた」と、最初の打者を三振に仕留めると3回を1安打4三振に抑え、右翼に回った。打っても8回表1死一、三塁で同点となる中犠飛を放った。この日は試運転だったが「二刀流大谷」復活ののろしをあげた。「コースを狙いすぎて制球を崩したけど、今日は試合で投げられた喜びの方が大きい」と感慨深げに話した。

 ケガの診断は「脳挫傷」「頭蓋骨骨折」軽度の「外傷性くも膜下出血」。「頭が痛くて。眠れない時もあった」。手術はせずに1週間の入院を経て6月は安静。練習からも離脱した。「悔しかった。でも夏の大会は投げたい、打ちたいと思っていた」。真っ先にお見舞いに来てくれた相馬幸樹監督(38)の「大丈夫」という言葉。「元気になって早く帰ってこい」と、チームメートからのLINEが支えになり「絶対に復活する」と気持ちを強くした。

 相馬監督もセカンドオピニオンや専門家を訪ね回り、大谷復活に万全の体制を整えた。6月26日から練習を再開すると順調に回復し18日には正式に病院から出場の許可も下りた。「今は全く痛みはありません」と笑い飛ばす。「ケガの前は自分優先。今はチームのためにできることは何かを考えている」。苦難を乗り越え生まれ変わった大谷が夏のマウンドで躍動する。【保坂淑子】

 ◆大谷拓海(おおたに・たくみ)2000年(平12)7月13日、千葉県生まれ。小2から野球を始め、滝野中では船橋シニアに所属。中央学院では1年春から外野手で出場し、秋からエース。178センチ、78キロ。右投げ左打ち。