山形南が9回、中條幸作外野手(3年)の劇的なサヨナラ本塁打で東海大山形に勝利した。ここまで4戦すべて逆転勝ちの快進撃で、8年ぶり19度目のベスト4進出を決めた。

 予兆はあった。エース井上真純投手(3年)の粘投が、じわじわとチームに活力を与えていた。立ち上がりに連打を浴び失点したが、3回以降は強打の東海打線をわずか1安打に封じ込め、二塁を踏ませなかった。石井貴之監督(44)は「2-2の同点になった時点で『オレたちはいけるんだ』という意識がベンチにあった」と振り返る。初戦の上山明新館は8、9回で5点を奪い、お釣りなしのサヨナラ勝ち。劣勢の展開に我慢を重ね、すべて逆転で勝ってきた。

 9回裏無死、ここまでノーヒットの3番中條が打席に向かう。石井監督は「1、2打席でタイミングは合っていた。(打席の)一番前に立て、と指示した」と送り出す。相手エースが投じた114球目を強振する、打球はレフト場外へ消えるサヨナラ本塁打となった。中條は「打ったのはインコース気味のストレート。自分が決めてやろうと、強く振ることを意識した」と、大仕事を成し遂げた。

 就任5年目となる石井監督は「自分の中では壁になっていた8強の壁を突破したので」と、しみじみと勝利の味をかみ締める。県内有数の進学校だけに練習時間も限られてくるが、殊勲の中條は「ここまでいっぱい練習してきたので、次も全力でやるだけ。鶴岡東に勝ちたい」と胸を張る。逆転の「南高(なんこう)」に、自信が宿ってきた。