第5シードの常葉大菊川が、サヨナラ勝ちで2年ぶり6度目の夏の甲子園出場を決めた。第4シード島田商を6-5。2番東虎之介内野手(3年)の一打で激戦に終止符を打ち、111校の頂点に立った。77年ぶりの決勝進出で78年ぶりの聖地を目指した島田商も、9回表2死走者なしから追いつくなど、驚異の粘りを発揮した。第100回記念大会となる夏の甲子園は8月2日に抽選会が行われ、5日に開幕する。

 2度リードされ、逆転し、追いつかれ、サヨナラ打…。県球史に残る2時間40分の激闘で、最後に輝いたのは東だった。

 9回裏2死一、二塁。1番奈良間大己主将(3年)が死球を受け、2死満塁になった。東は自信満々で左打席に入った。昨秋の島田商との練習試合、今春の西部地区大会決勝と、2回サヨナラ打を放っていたからだ。「7回くらいから『俺が決める』と思っていました」。

 フルスイングで放った打球は、高速で遊撃手の手前で弾んだ。強襲安打。東はサヨナラ勝ちを確信し、ガッツポーズで一塁を駆け抜けた。ホームベース付近では、歓喜の輪が広がり、その中心にいた奈良間は「今までで一番しんどい試合でした。仲間がつないでくれて、本当に全員が輝いていました!」と言った。

 2度の敗戦を経て、チームが1つになった。昨秋の県大会決勝では静岡に逆転負け。今春は県大会準々決勝で、東海大静岡翔洋に完封負けした。「みんな自分のやりたいことをやっていて、チームが崩壊しかけていました」と奈良間。危機感を持っていたのは、ベンチに入れない3年も同じだった。選手同士のミーティングで意見を出し合い、練習でミスをすれば、主将の奈良間にも「そんなプレーでいいのか!」と厳しい声が飛んだ。

 挑戦者のつもりで、一から取り組み、チームの気持ちが1つになった。静岡戦の逆転負けから学んだのは、どんな状況でも焦らないこと。2年前の夏の甲子園出場後から指揮を執る高橋利和監督(32)も満足げな表情で言った。「今日は、静高戦の反省が生かされた試合。本当にいいチームになりました」。

 難局を乗り越え、全国で3番目の激戦区、111校の頂点に立った。その自信は、第100回記念の甲子園大会にもつながる。22打数18安打、打率8割1分8厘の奈良間は力強く宣言した。「自分たちらしく、甲子園で勝ってきます」。2年前は未勝利に終わった聖地で、今度は旋風を巻き起こす決意だ。【鈴木正章】