誓いの一打が勝利への扉を開いた。3回、日南学園(宮崎)の8番奥野が先頭打者で二塁打。後続も続き、先制のホームを踏んだ。「父の分まで打ちたい」と入った打席だった。父豊一朗さんは宮崎南で88年夏、甲子園に出場も、控え選手で打席に立てなかった。親子2代の夢、聖地での安打を実現した。

 豊一朗さんは、10年に亡くなった元巨人の木村拓也氏と親友だった。奥野が小学生の時、自宅で打撃や守備を教わったことがある。木村氏から言われた「野球は楽しいものだから、全力でやればもっと楽しくなる。全力プレーしなさい」との言葉は今でも大切にしている。木村氏に憧れを抱き「亡くなった時は悲しかったです。でも、木村拓也さんの分も、自分が頑張ってプロになろうと思いました」と自身の目標に変わっていった。こちらは夢への途中だ。

 もう1人、活躍を届けたい人がいる。大会前から乳がんで入院している母ゆかりさんだ。宮崎大会準決勝で放った高校1号のホームランボールは、真っ先にプレゼントした。「母も病気と闘っているので、自分も負けじと戦っていきたいです。帰って、いい報告ができるようにしたいです」。バットに思いを乗せて。次戦は常葉大菊川(静岡)が相手だ。【鶴屋健太】