5年ぶり4度目出場の八戸学院光星(東北・青森)が、武岡龍世内野手(2年)のバックスクリーン弾などで開幕戦を制した。16年夏の甲子園2回戦で、9回裏に一挙5失点でサヨナラ負けした因縁の東邦(東海・愛知)に7-3でリベンジ。初回に5点を先制してリズムをつかむと、エース右腕・後藤丈海(2年)が11安打されながらも3失点と粘り抜いた。11年以来2度目の優勝に向け、11日の準々決勝では15年王者の高松商(四国・香川)と対戦する。

武岡が大会1号ソロで勝負を決めた。2点差に追い上げられた9回表、真ん中高めの直球を強振。二塁ベース手前でバックスクリーンに飛び込んだ打球を確認すると、右手を高々と突き上げた。「まさか、この大舞台でホームランが打てるとは思っていなかった。素直にうれしいし、最高です」。人生初のバックスクリーン弾に、笑顔が止まらなかった。

好投手攻略は野球部だけで構成される授業で予習した。東京入り前日の6日、担任でもある小坂貫志部長(40)が受け持つ5、6時間目の総合学習。東海大会決勝の映像を全員でチェック。左右の打者それぞれへの配球傾向を分析し、初回から実践した。先頭の伊藤大将内野手(2年)の中前安打をきっかけに、5点を先制。都内の宿舎に隣接する公園でも、午後11時頃まで街灯の下でイメージしながら素振りを繰り返した成果が出た。

9回裏、4点リード。遊撃を守る武岡も「あれっ、あの時と同じだなと思った」。中3でテレビ観戦していた16年夏の甲子園で、東邦に大逆転負けを喫した場面がナインの脳裏に浮かんでいた。「全員で楽しくやっていこうと声を掛け合った」。雨にぬれたグラウンドでの悪送球を防ぐため、武岡も一塁にワンバウンド送球するほど落ち着いていた。仲井宗基監督(48)も「アメトーークとかでもやっていて知っているでしょうけれど、この子たちには関係ない。どの試合も最後まで気を抜かずに、攻めてプレッシャーをかけることを、いつも言っています。武岡の1発は大きかった」と選手をたたえた。

初戦突破は、阪神北條史也内野手(24)、ロッテ田村龍弘捕手(24)らを擁して頂点に立った11年以来。その他の2度は初戦敗退だけに、武岡も「新しい歴史を刻めた。1回勝てたので(データ的には)優勝しかないですね」と“V率100%”の吉兆も得た。次戦は中学で所属した徳島ホークス時代に対戦した宿敵で、大会前にも対戦を熱望しあった四国NO・1左腕の高松商・香川卓摩(2年)を打ち崩すつもりだ。「神宮球場は真っ青できれいだし、やりやすい」。武岡が全国で躍動した先輩の背中を追う。【鎌田直秀】