高校野球が盛り上がりを見せた2018年を担当記者が振り返ります。今回は「猛暑の夏」がテーマです。

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その日の午後3時ごろは、京都・西京極駅近くのうどん屋で少し遅めのお昼ご飯を食べていた。7月23日のことだ。この時はまさか、夜が更けるまで球場にいるとは思わなかった。

連日の猛暑に苦しんだ今夏。四方を山に囲まれた盆地の京都も例外ではなかった。高校野球の京都大会4回戦が行われていた同19日の午後3時ごろには、わかさスタジアム京都のある京都市で39・8度を観測。1880年に統計を取り始めて以来の観測記録1位と並ぶ気温だった。

異常な暑さに、京都府高野連は異例の決定を下す。23日に行われた準々決勝4試合で、第2試合の後に休憩時間をはさみ、第3試合を午後4時、第4試合を同6時半と開始を遅らせた。一番暑い正午すぎのプレー時間を避ける策だった。

第3試合が長引いたため、第4試合の鳥羽-立命館宇治は午後7時1分に開始され、ナイター試合となった。試合はシーソーゲームとなり、5-5のまま延長戦に突入。延長11回表2死一、二塁で、立命館宇治の1番中村滉成外野手が右前適時打を放ち勝負を決めた。試合終了は午後10時37分。試合時間は3時間36分に及んだ。校歌を歌う声が響く空は、漆黒の夜空だった。

立命館宇治の里井祥吾監督は「連盟に配慮してもらってありがたく思う。通常の時間にやっていたら倒れていたと思う」と話し、鳥羽の山田知也監督は「慣れない中で選手たちがよく頑張ってくれて良かった」と選手たちを労った。

異例の深夜に及ぶ試合。午後9時50分には「引率者のいない生徒は帰宅してください」とスタンドにアナウンスするなど、京都府高野連も対応に追われた。もし午後11時で決着がつかなければ、翌24日午後4時から再試合を行い、日程を1日ずつずらすことを一時的に決定。日本高野連に問い合わせている最中に、試合が終わった。京都府高野連の井上明理事長は、17年の春季東京大会決勝で、清宮幸太郎擁する早実と日大三がナイター試合で行われていたことを記憶。アナウンスする時間など参考にした。

早急に熱中症対策をした試合運営に好意的な声も多いが、井上明理事長は試合終了後、頭を悩ませていた。「みんなで協力して考えた結果。難しいですね…」。酷暑対策には大きな成果があるものの、試合がもつれればこの日のように高校生が深夜に試合を行うことになる。あくまでこれは今できる最大限の対応策で、今後も議論を続けていくとした。

甲子園大会でも数々の熱中症対策がとられた。アルプス席には散水機を3台ずつ用意。開会式で選手たちはペットボトルを携帯し、入場行進後に一斉に給水タイムをとった。来夏へ向けて日本高野連は、休養日の1日増や、決勝の開始時間を早めることなどを案に新たな対策として検討している。高校球児の健康を守り、最高の環境でプレーしてもらうため、知恵を合わせて試行錯誤を重ねていく。【磯綾乃】