明石商(兵庫)の2年生コンビが本領を発揮した。ともに昨夏の甲子園から注目されていた中森俊介投手と来田涼斗外野手。中森は自己記録を1キロ更新する146キロの直球と鋭い変化球で1失点完投。東京王者の国士舘を寄せ付けなかった。走攻守でチームの中心の来田も3打点と活躍した。初のセンバツ制覇を目指す実力校が好スタートを切った。初陣の大分、啓新(福井)も初戦を突破した。

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初回、先頭。引っかけたようにも見えた快速球は重力に逆らい、右打者・黒川の外角低めぎりぎりへ。146キロストライク。自己最速を更新する最高の1球で、中森の春が幕を開けた。

「甲子園で146キロを出せたのはうれしいです。初回は抑えようと力を入れました」。2回に援護点をもらい、波に乗った。本領発揮は4回。1点を返され、なお2死満塁で黒川にスライダーを見せてから高めに力を入れた直球で押し込み、右飛にしとめた。

「結構疲れました。要所で抑えられたのがよかった」。141球、被安打9での1失点完投は中森の真骨頂だ。テストで学年1ケタ順位に入ったこともある文武両道エース。「論理的に考えるのが好き」と得意教科は数学。最速150キロへの思いが相当強いが、まず勝つための方程式を求める。日体大在学中に教育実習で来たOB西武松本航の直伝カットボールも、今は必要ないと考え封印。狭間善徳監督(54)から完投指令を出されたこの日は、場面によって球速より制球を優先。同監督は「素晴らしい」と投球術に舌を巻いた。

入学時から中森以上に注目されてきた来田も負けていない。2回に中森の押し出し四球で先制したあと、2死満塁で右翼前に強烈なライナーを放って2打点。8回もダメ押しの右犠飛で計3打点。昨夏は甲子園1回戦でサヨナラ失策した。「今日は50点。でも夏に1勝できなくて悔しかったので、勝てたのはうれしい」。2人は神戸の宿舎で同部屋。野球だけでなく、今度のクラス替えの話などで盛り上がる。来年のドラフト候補コンビが、悲願達成の原動力になる。【柏原誠】

▽オリックス谷口スカウト 昨年よりも一回り体も大きくなり、それに比例してボールの強さ、キレも増してきている。まだまだ伸びしろがあるし、来年ドラフトで上位に入る力は十分あると思う。