平成最後のセンバツVを狙う東邦が、優勝した平成最初の89年大会以来30年ぶりの4強進出を決めた。

高校通算43発のドラフト候補・石川昂弥主将(3年)こそ無安打だったが、この日は“バイプレーヤーズ”が大暴れした。4回裏1死一、二塁、8番成沢巧馬捕手(3年)が右中間へ、今大会10打席目で初安打となる先制の2点二塁打を放った。2-0の6回裏1死満塁では、9番山田航大内野手(2年)が2点二塁打。6番長屋陸渡外野手(3年)も4、6回に起点の2安打を放つ。下位打線で7点中4点をたたき出した。

甲子園の2試合で、スタメン中ただ1人無安打だった成沢は「バットに当たるコースは振っていこうと思ってました」と笑顔を見せた。周りから「オマエだけ打ってないね」とイジられまくり「開き直った」と言いつつも、「つらさは内心めちゃくちゃあった。みんなに傷をえぐられて…」と苦笑い。昨秋は5番の経験もある男が、甲子園入り後に調子を落とし、公式戦で初の8番に座っていた。

女房役らの活躍に、石川も喜ぶ。「今日はみんなが打ってくれたんで、僕は抑えようという考えでいった」。5回まで1失点と試合を作り、一挙5点を奪った直後の6回裏にギアを上げた。「力を入れました。この回を抑えたら、完全にウチに流れが来ると思ったので」-。

130キロ中盤の多かった球速が140キロを超えた。筑陽学園のクリーンアップを3者凡退に切ってとる。3番をスライダーで空振り三振、4番には142キロ、5番には140キロの内角速球で詰まらせた。2番手の奥田優太郎(3年)にマウンドを譲るまで、7回3安打2失点、わずか89球のハイテンポで守りから攻めのリズムを演出した。

東邦の森田泰弘監督(59)は「成沢が打ってなかったんで、それが一番うれしいです。ベンチは大騒ぎで、チームがぐっと乗りました」と笑顔を見せた。“平成最初と最後のセンバツ制覇”まで、あと2勝。「このチームは優勝を目指してやってきました。それしか考えてません。ここまで来たら、優勝しかないでしょう」。決勝翌日の4月4日に還暦を迎える指揮官がタクトを振る。センバツ単独最多となる5度目の頂点は、くっきり見えている。