東邦(愛知)のエース石川昴弥(3年)が143球完投で強打の明石商(兵庫)を2点に抑え、30年ぶりの決勝に導いた。

明石商の2年生エース中森俊介との投げ合い。「みんなが点を取ってくれるまで頑張って投げよう、と。相手は2年だし、絶対に負けない思いで投げた」。

球数を要しても我慢強く、コースと低めを突いた。3点先制をもらった直後の8回に2ランを被弾。「投げ急いで高めにいった。あの回だけダメだった」。すぐにリセット。2点リードに広がった9回、2死一塁で打者の中森を外のボール球で空振り三振。会心のガッツポーズを繰り出した。

1年秋から4番を打ち、今大会も2回戦の広陵戦で本塁打を放ったプロ注目の打者。投手としても非凡だ。左打者の内へ真っすぐ、右打者の外にスライダーが生命線。抜群の制球力は捕手の成沢巧馬(3年)に「リードしていて楽しい」と言わせる。準々決勝で先頭打者弾とサヨナラ弾を放った明石商の来田涼斗(2年)は徹底してインコースを攻めた。3回には死球を与えたが「当ててもしょうがない。厳しく投げた結果」と言い放ち、相手キーマンを無安打に封じた。

「自分たちは優勝するためにここに来ている。1歩近づいた」。東邦の89年優勝時、父尋貴さんも同校野球部の一員だった。石川が「夢」と表現する頂点に王手をかけた。「あと1勝。自分たちの力を出して負けたらしょうがない。自分たちの野球をしたい」。プロ注目打者でエースで主将の大黒柱は、しっかりと歓喜の瞬間を見据えた。