学法石川が4-3の9回サヨナラで福島西に競り勝ち、7年ぶり4強進出を決めた。昨年12月就任の佐々木順一朗監督(59)が、仙台育英時代の経験も生かした「佐々木マジック」を展開。選手交代や言葉の“魔法”で、竹本江希捕手(3年)の中前サヨナラ適時打を導いた。創部5年目のふたば未来学園はV候補の福島商を撃破し、初の4強入り。ともに、上位3校に与えられる東北大会(6月6日開幕、山形)出場権獲得に王手をかけた。

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同点に追いつき、なおも1死一、三塁。満塁策を選択した相手を見ると、佐々木監督が動いた。次打者でここまで無安打の竹本を呼び寄せた。「自分を信じろ。ちょこまかしないでいい。ボールをたたきつぶしてこい」。試合途中からノーステップ打法に変えて悩んでいる心境を察するかのように、背中を押した。竹本も「あのひと言で、思い切れました」。足を上げる打撃フォームに戻し、2球目の外角直球を強振。「自分にチャンスが回ってきたのは運命。ヨッシャーって感じでした」。二遊間を抜ける人生初のサヨナラ打で、歓喜の輪に飛び込んだ。

指揮官は試合前から“予言”していた。珍しくシートノック後に円陣を組むと「今日は苦しい試合になるよ。間違いなく苦労するから」。実績では相手より上である油断を感じ、引き締め直した。「まさか、ここまでとは思わなかったですけれど…」。2点の猶予を与えていた先発1年生右腕・立石理人を2回途中で代え、2番手右腕・秦竜之輔(3年)が8回まで1失点好投。2度の併殺などで好機を逃し続け、1点を勝ち越された8回裏には、代打攻勢で変化も生んだ。9回にはエース右腕・横山凌(3年)を投入。最後は三振でガッツポーズして闘魂注入。指揮官は「1年生を負けさせないように先輩が戦った。頼もしく見えました」とほほえんだ。

9回は福島県記録にあと1と迫る12打席連続出塁をマークした佐藤日翔内野手(2年)が好機を広げると、藤原涼雅外野手(3年)の右前適時打で同点に追いつく意地が、お膳立てした。佐々木監督は「僕はどちらかというと、9回1点差負け(から逆転)とか、サヨナラとかが得意なほうですから。こういう時のためにやっているんです」。夏12連覇中の聖光学院や、昨夏準優勝の福島商などが敗退した今大会。「佐々木マジック」の存在感が漂ってきた。【鎌田直秀】