明桜(秋田1位)が8回裏に一挙4点を奪う大逆転劇を演じ、学法石川(福島2位)に4-3で勝利。秋田経法大付時代の05年以来14年ぶりの準決勝進出を決めた。3番手で登板した工藤泰成(たいせい)投手(3年)が7回6安打1失点の好投。8回裏には逆転の2点適時打を放つなど投打で大活躍した。準決勝は明桜対鶴岡東(山形1位)、仙台育英(宮城1位)対弘前学院聖愛(青森2位)の対戦で10日に行われる。

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工藤が投打で絶叫した。0-3で迎えた8回裏、適時打と相手の失策で1点差に迫り、2死満塁で打順が回った。学法石川・秦竜之介投手(3年)の外角直球を流し打って左前に。土壇場でひっくり返し、盛り上がるベンチに向かってガッツポーズでほえた。

9回表は自らリードを守り切り1回転して喜びを爆発。「決勝戦のつもりでいった」と、4強入りを優勝したかのように喜んだ。輿石重弘監督(55)も「打撃も良かったが、終盤にチャンスがくると思いながら粘って投げてくれた」とたたえた。

野球は中学で辞めるつもりだった。秋田・能代一中3年時は春夏ともに1回戦敗退。野球への意欲が薄れ、高校では遊びではまったバドミントン部に入ろうと思った。野球推薦の話もなく、一般入試で明桜を受験した。父一範さん(47)は秋田経法大付出身。野球部ではなかったが同校の全盛期を知る大の野球好きだった。「明桜に入るなら野球を続けてほしい」の願いに応えて野球継続も、そこは全国から有望選手が集まる名門。「先輩だけではなく同学年もすごい選手ばかりで、正直やっていけるのかなと思った」とくじけそうになった。それでも「監督がずっと見てくれた。父もいろいろアドバイスしてくれる」と周囲の支えのおかげで、最速142キロを記録するまでになった。

2月には元DeNA監督で、巨人などで投手コーチを務めた尾花高夫氏(61)が総監督兼投手コーチに就任。リリースをより前にするようアドバイスを受け、制球が安定した。女房役の加藤洋平主将(3年)は「変化球でストライクを取れずに自滅していたけど、相当良くなっています」と成長を認める。「1だと責任があるので気に入っています」と笑い飛ばした背番号10の苦労人は、「今日の流れをつなげたい」と87年以来32年ぶりの優勝を見据えた。【野上伸悟】