仲間のために勝ち続ける。室蘭地区で室蘭東翔が苫小牧高専を9-2の7回コールドで下し、3年連続で初戦突破した。

今春は難病の潰瘍性大腸炎を発症してベンチ外だった佐藤陸翔(りくと)一塁手(3年)が、6回無死満塁に代打で登場。復帰の打席は遊飛に倒れたが、チームは一丸となって計11安打の快勝で好スタートを切った。この日、札幌、北見、十勝地区も開幕した。

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仲間のために負けられなかった。室蘭東翔は2回2死二塁で相手の失策で先制すると、7回まで毎回得点を刻んだ。ナインが一丸となって11安打9得点。今春の地区初戦に続き、同じ相手の苫小牧高専にコールド勝ちした。伊藤俊介監督(46)は「春はたまたま勝てた」と、気を引き締めて臨んだことを強調した。

ムードメーカーが戻ってきた。7-0の6回無死満塁、佐藤が代打で打席に立った。今年2月に腹痛が毎日続き、病院で検査を受けると難病の潰瘍性大腸炎を患っていた。4月10日から約1カ月入院。その間は絶食が続いて体重は約10キロ減った。母の愛さん(39)は「39度の高熱が続いて、入院前が一番きつそうだった」と振り返る。

昨秋は「6番・一塁」のスタメンで、エース貴戸湧也(3年)とともに投手もこなし貴重な戦力だった。今春はスタンド応援に専念し、退院後は少しずつペースを上げながら練習に取り組んだ。「体力が戻らないのがしんどい。でも最後の夏なのでどうしてもやりたかった」。チャンスで立った打席は遊飛に倒れたが「打てないのは悔しかったが、出させてもらってうれしかった」と前向きだった。

明るい性格で練習後は先輩のモノマネや椎名林檎の「丸の内サディスティック」を歌いナインを盛り上げる。通院をしながらの練習参加だが、チームに活気が戻ってきた。山田徳志主将(3年)は「(病気と闘い)頑張っていたと思う。春は勝利を届けようと思い、夏はこうして一緒に戦えている。チーム一丸になって勝利を目指しています」と言う。

2回戦の相手は今春の全道で準優勝した苫小牧工。この日の初戦は快勝したが、打球を芯で捉えられなかったこと、守備でのアウトの取りこぼしを反省した。「1日でも長くみんなと一緒に野球がしたい」と山田主将。夏はまだまだ終わらせない。【西塚祐司】