第101回全国高校野球選手権大会(8月6日から16日間、甲子園)の地方大会が23日、南北海道函館地区、北北海道十勝地区などで行われた。函館地区では、6季ぶりに単独チームで出場した9人の奥尻が、江差・上ノ国連合を11-7で下し、14年夏以来5年ぶりの単独1勝を挙げた。1点を追う9回、今春9人目の部員として入部した8番明上海斗二塁手(1年)の中前打を口火に、野選を挟み6連打で7点を挙げ逆転した。沖縄大会は雨天順延となった。

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単独出場の命運を握っていた男が、逆転への突破口を開いた。1点を追う9回先頭で、明上は甘く入った直球を迷わず中前に運んだ。「ここで1点を取らなきゃ負ける。どんな形でも出塁しようと打席に入った」。それまで3打数無安打の伏兵が出塁し、一気に勢いづいた。この回、打者11人の猛攻で一挙7得点と突き放した。たたみ掛ける奥尻マシンガンに井上暁史監督(26)は「明上がいいところで打ってくれた。うちは1本出ると立て続けに出る方なので」と振り返った。

今春、主将の満島塁一塁手(3年)を中心に17年夏以来の単独出場を目指し、新入生の勧誘作戦に踏み切った。8人まで決まったが、満島と同じ奥尻中野球部の後輩、明上は「バドミントン部を復活させたい」との強い希望があり、なかなか入部の意思が固まらなかった。満島は放課後や休み時間のたびに「君が入ると単独で出られるんだ」と繰り返し訴え続けた。「中学時代にお世話になったアニキに恩返ししよう」と、明上は入部を決意した。

本来は9人がそろった春季大会から単独出場する予定だった。だが、4月の青森遠征中のノックで、満島の顔面に送球が直撃。右あごの骨を3カ所骨折し、人数不足になり出場を辞退していた。満島は手術であごに金属プレート入れ、さらに3週間の入院。5月下旬に復帰し、晴れて単独出場にこぎつけた。2年前の単独出場は、春夏ともに初戦敗退。初めて歌う校歌に満島は「すごくいいなあと感じた」と喜んだ。

相手の江差・上ノ国連合は、昨秋3校連合で出場し2勝を挙げた“元チームメート”。泣き崩れる相手ベンチを見た満島は「勝ったけど複雑な思いもある」と真顔に戻った。戦友を倒してつかんだ1勝を、次の勝利への糧にする。【永野高輔】