桐生第一の韋駄天(いだてん)、工藤ナイジェル内野手(3年)が躍動した。

「1番二塁」で出場。2点リードの2回1死二塁で、右中間を深々と破る適時打を放った。50メートル5秒9の快足を誇る工藤は悠々三塁へ。この適時三塁打が呼び水となり、この回一挙5点。試合の主導権を握り、7回コールドで初戦を手にした。

「初戦だし、試合の入りが大事だと思っていた。とにかく勝ててよかった」。

165センチ、65キロと小柄ながら、ガーナ人を父に持つ工藤は抜群の身体能力を誇る。北海道・釧路市で生まれ、すぐに移り住んだガーナではサッカーに熱中。小学2年で日本に戻って東京・江戸川区に住んでからは東京・江戸川ボーイズに所属しながら、ボクシングや縄跳びにも本格的に取り組んだ。

中学2年時には「全日本なわとび選手権」中高生男子の部に出場。30秒スピード(二重)で2位になるなどし、辞退したものの世界選手権代表に選出された。

「すべて野球のトレーニングの一環としてやっていた。いろいろなスポーツをやったことは、今に生きていると思います」。この春からは主将の重責も担う。「荷が重いけど、しっかりやらないといけない。行動で示そうと思っています」。08年を最後に遠ざかっている夏の甲子園出場へ、スピードスターがチームを引っ張っている。