チーム3年ぶりの夏勝利にも、岩倉(東東京)の7番・荒井夢叶(ゆうが)外野手(3年)は満足はしていなかった。対外試合禁止処分による昨秋以来の公式戦に、緊張が抜けなかった。6回2死三塁、右中間に先制適時二塁打を放ったが「先制できたことはうれしい。でも自分たちの野球ができなかった」と不満げだった。毎回の大量得点を狙っていただけに、相手投手に苦戦し2点にとどまった結果に、悔しさをあらわにした。

新チーム発足後から「打線の強化」をテーマにスイング軌道を見直した。「上からたたく」ではなく「下から打つ」をチーム全員で意識改革した。練習試合では昨夏よりも圧倒的に長打が増え、全体の本塁打数も昨年から100本以上も増えた。「ヒットの続きをホームランだと思ってスイングをするようになったら打撃が向上した」という荒井を筆頭に、自信をつけた選手が増えた。

序盤は両軍無得点。途中から「1-0で勝つ」作戦に切り替え、結果的に経験値の高いバッテリーに助けられた。荒井は「次はコールド勝ちを狙う」と誓う。春不参加の悔しさを糧に、出し切れなかった力は次に発揮する。戦いは始まったばかりだ。【加藤理沙】