東北6県の先陣を切って、青森で令和最初の夏が開幕した。東奥学園が4-2で十和田工に逆転勝ち。「5番一塁」長谷川友哉内野手(2年)がチーム全打点となる2安打4打点の活躍で、令和初勝利を導いた。

自校のグラウンドがない厳しい環境の中で磨いてきた精神力も結実した。12日の2回戦では、今春の地区代表決定戦で敗れた第4シード青森商と対戦。リベンジを果たし、昨夏の16強超えに挑む。

   ◇   ◇   ◇

長谷川は左中間の芝生に打球が跳ねると、二塁塁上でガッツポーズを繰り返した。クリーンアップを任され「前の2人がゴッツイのに自分はヒョロっとしているので…。でも最後までボールを見てミートできるところが良いところ」。筋トレや食トレでも体重が増えない悩みも抱える183センチ、63キロの細身な体での殊勲打に「3年生で試合に出られない人も多いので、その人のためにも打てて幸せでした」と笑顔を見せた。

相手の右サイド投手を想定した開会式前の早朝打撃練習から絶好調だった。6回の好機には桜庭瑞人監督(34)からの伝令でパワーも得た。「『引きつける右方向への良い打ち方が出来ていたから積極的にいけ』と言ってもらった。自分は褒められると伸びる子なので…」。同点の右前2点適時打は会心の一撃。昨夏ベンチ外の悔しさに発奮し、ティー打撃から行ってきた右手を押し出す意識の徹底が大舞台で結果に出た。

学校に屋内施設しかない逆境も力に変えた。グラウンドを求めて転々とする。借りられない時は青森市南部の雲谷(もや)峠と呼ばれる山に行き、スキー場近くの急坂をひたすらダッシュ。中前に両チーム初安打を放った鳴海蓮捕手(2年)も「球場が使えない日は、正直地獄」と苦笑い。冬場は吹雪の中、午前6時に歩いて登校。凍える寒さの真っ暗な体育館で、強豪バドミントン部が使用する前にトレーニングを重ねた。練習試合も常に敵地。月に数回使用して慣れ親しんできた“本拠”青森市営野球場は味方となった。

昨夏は初戦でシード校を撃破。次は今春に3-6で惜敗した青森商に挑む。長谷川は「令和で最初に勝とうと、みんなで話していたので、勢いはつく。去年の先輩の16強を超えたい」。校舎は青森県随一の6階建て。青森球界の高みも狙う。【鎌田直秀】

▽開会式で東奥義塾の富樫翼マネジャー(3年)が入場行進全体の先導役を務めた。腰痛のため1年夏で選手を断念。志願して裏方に回った。優秀な仕事ぶりに、地区の推薦で大役に抜てきされた。「とにかく野球が好き。大学、社会人でもマネジャーをやりたい」。試合では記録員としてベンチ入り。「いいチームになった。甲子園に行きます」と自信を見せた。