北桑田(京都)の岩佐泰我(たいが)捕手(3年)が意地の1発を左翼芝生席へ運んだ。昨夏8強の塔南に8点リードされる中、4回1死一塁で「4番が1発を打って流れを変えてやろうと思った」と部員14人分の思いをバットに乗せた。

全国的に珍しいボルダリングをする野球部だ。学校は田園風景が広がる京都市右京区にあり、冬は降雪の影響でグラウンドを使用できず、素振りやウエートトレーニング中心になることがある。しかし、昨年12月に校内にボルダリング施設が設置されたのをきっかけに練習に取り入れた。ホールド(突起物)のついた人工壁をよじ登り、岩佐は「握力や指が強くなり、体幹が鍛えられた。登る時、考える能力が付いた」と効果を実感して夏に臨んだ。

施設は地域住民や学校の後援会からの寄付でできた。林業専門の森林リサーチ科やワンダーフォーゲル部があり、東京オリンピック(五輪)の新種目で注目されるボルダリングがなじみ、これを機に入学を希望する生徒が増えればという願いもあった。試合は2-12で5回コールド負けしたが、岩佐は父篤史さん(42)に「学校に通わせてくれてありがとう」と高校通算9号の記念ボールを手渡した。【南谷竜則】