春夏通じて8度の甲子園出場を誇る東農大二(群馬)が大勝発進した。1点を追う4回2死から2四球を挟んで8者連続安打。一挙9点を奪うなどして大泉に5回コールド勝ちを収めた。

聖地から遠ざかって10年。かつての強豪校はこの春、髪形を自由化した。自らの意思で丸刈りの慣習を撤廃した選手は、短く整えられたヘアスタイルで躍動した。

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13安打を放って5回コールド発進。試合後、高らかに校歌を歌う選手の中に、丸刈りの選手は1人もいなかった。「おしゃれをしたいからではないです。自分で考え、各自が役割を果たすのが僕らのスタイル。頭髪自由化はその象徴です」。さわやかな短髪スタイルの小野沢光洋捕手(3年)は笑顔でうなずいた。

今年3月。小野沢ら選手が話し合って、頭髪の自由化を坂上泰生監督(33)らに提案。監督、コーチはこれを快く受け入れた。整髪料はNGとするなど自分たちでルールを作った上で、それぞれが好みの髪形で野球に取り組む。もちろん、あえて丸刈りにする選手もいる。そこも、自由だ。

春3度、夏5度の甲子園出場を誇る実力校も、2009年(平21)夏を最後に聖地から遠ざかる。昨秋の県大会で3回戦敗退後、低迷打破を図るため、坂上監督は改革に着手した。

「リーダー制」を敷き、投手、捕手、内野、外野、打撃、走塁、トレーニングの7部門それぞれにリーダーを決めた。さらに、清掃など生活面も含めて13の「委員会」を設置し、ここでもそれぞれに責任者を決めた。「選手に主体性を持たせるのが目的。自分で考えて行動してもらいたかった。最初は失敗もありましたが、やっとチームらしくなってきた。髪形も自分たちで決めたことですから」と坂上監督は理解を示す。

日々の練習メニューも、小野沢が中心になって選手で決める。「責任は重いけど、苦ではないです」。

自ら考え、実行する。慣習だった丸刈りを自分の意思で脱した大人の集団が、実力校に新たな歴史を刻む。【片倉尚文】