<高校野球栃木大会:足利清風7-0佐野東>◇13日◇1回戦◇栃木県総合運動公園野球場

「夢を見ているようでした」。佐野東の柴崎綾音マネジャー(3年)は涙声で絞り出した。

1年の秋、部員は8人しかおらず練習試合もできなかった。そんな中「少しでも力になれるのだったら」と手を挙げたのが柴崎マネジャーだった。父広明さんの影響で、小学4年から6年まで野球を経験。優しい笑顔から、プレーする姿は想像つかないが「バントだけは得意でした。一緒に戦って、本当に知りたい情報が分かりました」。2年の春に新入生が入部すると、再び裏方に回った。

「野球が大好き。感動するから」。この日、佐野東は守備の乱れから崩れ、0-7で敗れた。ひょっとしたら、野球が嫌いになっていないか-。そんな心配は杞憂(きゆう)だった。「最後は私の好きなチームの姿でした。野球がもっと好きになりました」。予想外の言葉だった。

「努力が報われる保証はない」。柴崎マネジャーとそんな話をしたことがあった。その時、彼女は言った。「きっと誰かが見てくれているから、頑張り続けることができるんです」。選手の努力をそばで見つめ続けた3年間。そんな娘を、そっと見守り続けた母久実子さんは「私の誇りです」と優しい笑顔で包み込んだ。【佐藤勝亮】