171センチの体には限界が近づいていた。「結構しんどかった。決めてくれないかな、と」。福知山成美・小橋翔大投手は祈った。延長10回に神内秦外野手(3年)の一打でサヨナラ勝ちが決まると、大喜びでベンチを出た。

投げ合った乙訓の林翔大投手(2年)は最速143キロの好右腕。6回に1-1とされ、我慢比べに。8~10回は走者を出しても打たせて取り、132球で白星を呼び込んだ。3回戦では京都屈指の好投手、京都翔英・遠藤慎也投手(3年)に8回1失点で投げ勝っていた。

球速はほぼ120キロ台。「ほとんどの投手は僕より速い。だから負けたくないと思う」。制球力と思い切りの良さが生命線。初球からコースを厳しく攻めるため、打者37人のうち初球ボールは12。それでも四球を与えなかった(2死球)。調子が悪く、中堅から見ていた神内は「球が垂れていた」。それでも、大胆に内角を突いた。

メンバー20人のうち福知山市出身は小橋を含め3人。明徳義塾(高知)のエース林田大成(3年)は市内の別の中学野球部でしのぎを削ったが県外へ。センバツ出場した啓新(福井)のエース安積航大投手(3年)も同市出身だ。一緒にプレーできなかったことにも「みんな頑張ってほしい。応援しています。僕は出ようとは思わなかった」とニコニコ笑う。

乙訓には昨春、今春と競り負けた。今春のサヨナラ負け後は全員で走り込み、体力強化を図った。小橋も「同じ相手に3度負けるわけにいかない」と負けん気をぶつけた。福知山が育んだ小さな大エースが6年ぶり夏の甲子園に導く。【柏原誠】