最速158キロを誇る星稜・奥川恭伸投手(3年)が故郷石川のプライドをかけた戦いに臨む。

17日の3回戦は注目の智弁和歌山戦。相手は2回戦で大会タイ記録の1イニング3本塁打をマークした強力打線だが、対戦を楽しみにしている心境をのぞかせた。過去、夏の甲子園で石川県勢は和歌山県勢に6戦全敗。生まれ育った石川県のレベルアップを望むプロ注目右腕は、全国的強豪に対して全力投球を誓った。

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奥川の目つきが少し変わった。智弁和歌山の話を振られた時だ。

奥川 ビデオを見なくても分かる。昨年から出ている選手も多いので。他の人たちからは智弁和歌山が勝つと見られていると思う。智弁が勝つと思っている人を見返したい。これまで石川代表が甲子園で全国的な強豪に勝つことがあまりなかったので、そうやって強豪を倒すことで石川のレベルも上がっていく。

夏の甲子園で石川県勢は和歌山県勢に6戦全敗。延長18回を戦った79年の伝説の箕島戦も含まれる。北陸3県では15年センバツで敦賀気比(福井)が初めて優勝したが、石川は春夏とも未達成。星稜が全国的強豪とは見られていない現実を、奥川らナインは認める。

智弁和歌山と星稜は初対戦。今年は2試合で15得点の強力打線だ。2回戦の明徳義塾(高知)戦では大会タイ記録の1イニング3本塁打の爆発力をみせた。

13日の試合後、奥川は大阪市内の宿舎に戻って2時間半、昼寝した。寝付きが遅くなり、いつもは夢の中にいる午後11時すぎ、テレビ朝日系列「熱闘甲子園」にチャンネルを合わせた。オープニングから救援で好投した自分の姿が取り上げられたが、それより目がくぎ付けになったのは智弁和歌山の猛打だった。

「1イニング3本塁打はすごかった。相手の隙をついてたたみかけてくる。それだけ力があるので細心の注意を払いたい。全てを出し切らないと抑えられる相手じゃないので、それが楽しみ。ワクワクの気持ちを大事にしたい」

もちろん、2試合分のビデオで入念に研究を進めている。目標は気負わず「3点以内。5点でもいいかな、くらいの気持ちで」。台風接近による順延で中3日と空いて臨む大一番は、体調万全の本気モード。生まれ育った石川県の誇りをかけて、全力で腕を振る。【柏原誠】