天理(奈良)が逆転サヨナラ勝ちで5年ぶりの決勝進出を決めた。3-4の9回に相手ミスから打線がつながった。4日の決勝では大阪桐蔭と戦う。

OBで元近鉄の中村良二監督(51)は驚きを隠せなかった。「普通に考えて履正社さんに勝てるわけがない。びっくりしかない。出来すぎですわ」。

毎年6月の練習試合ではいつも大差負け。今年も、のちの甲子園優勝メンバー相手とはいえ、2試合ともコールド点差で敗れた。ここまで報徳学園(兵庫)、奈良大付と連破。出発前には「2度あることは3度あるということわざがあるだろ? 実現しようか」と選手に声をかけた。

相手も同じ高校生だった。中村監督は6回にけん制で走者を刺したあたりで「あれ?」と感じ始めていた。その後0-4まで点差が開いたが7回に3点を奪った。「いける、いけると選手がベンチで言い続けていたのが、実際に3点取って本当にいけるんじゃないかとなった」

最後もミスにつけ込んだ。1点を追う9回、1死から敵失で出塁。得点圏に進め、杉下海生(あおい)内野手(1年)の右前打で同点。続く河西陽路(ひろ)外野手(2年)が左中間にはじき返し、サヨナラの走者を迎え入れた。

「河西が最後、ニコニコと打ってくれました」と中村監督。殊勲の河西は打席でなぜか、満面の笑みを浮かべていた。

「楽しんだら何かある。野球に限らず、楽しんだもん勝ち。打席ではいつも笑うようにしています。今日は『ここで打ったらインタビューかな』と思っていた」。さすがにかなり緊張したというが、仲間の掛け声にほぐされた。「サヨナラは人生初。とにかくうれしい。叫びました」。最高のスマイルを輝かせた。【柏原誠】