93年春センバツで町立高初の甲子園出場を果たした知内は、独自の取り組みで最後の夏をまっとうする。

夏の甲子園、地方大会の中止決定から一夜明けた21日、吉川英昭監督(44)は「感傷的になるのは昨日まで。ピンチはチャンス。3年生の引退は卒業式。何も終わってないし、取り組みはこれからも続けていくと生徒に伝えています」と、前を向いた。

全体練習自粛中の4月に立ち上げたブログ上で、両肘とつま先で体を支える体幹トレ「プランク」の持続時間を競いあってきた。2月に62歳の米国男性が8時間15分15秒のギネス記録を打ち立てたニュースを思い出した同監督が「離れていても一緒に我慢できるようなトレーニングができたら」と導入したもの。

選手だけではなく、家族や友人、職員ら約150人が参加。ブログ上では「プランクチャレンジ」と題した競技会を行い、ランキングをつける。「球児は甲子園という目標が頼りで社会の中での位置に疎くなりがち。目標を失うと、とたんに不安になる。離れていてもつながりを感じられるように」。両親や姉も参加している主将の大野己一右翼手(3年)も「自分の家族や仲間の家族との関係も感じられるようになれた。大会がなくなったとしても将来に生きるし、自分の記録とも向き合える」と、心のよりどころを見いだしている。

今週末にも「プランクチャレンジ」は実施予定。吉川監督は「数年後、数十年後、また何か大変なことを迎えた時、あのときああやって乗り越えたよなという記憶をつくってあげたい」。知恵を出し何かを始め、続けることで、困難に立ち向かう。【永野高輔】

○…知内の取り組みを支える陰の立役者が、今春、就任の貞安洋子部長(38)だ。商業、情報が専門でパソコンに詳しい。ブログ立ち上げに携わり、毎日の記事更新、画像アップ、プランクデータ集計などを担当している。野球経験はないが、弓道で全道大会優勝経験のある元アスリート。「対面できない中、ブログを通じ誰かの姿を見てつながりを感じ、前向きな気持ちを持ってくれたら」と話した。