センバツに続き、夏の甲子園も戦後初の中止が決定した。各所に及ぼす影響は計り知れない。「あゝ甲子園」と題し、人々の思いとともに紹介していく。

   ◇   ◇   ◇

常総学院(茨城)は18日から練習を再開し、グラウンドに球音が戻った。春夏通算25回の甲子園出場で、春1回、夏1回の全国制覇も果たした強豪。茨城だけでなく、関東近県から甲子園を目指す有望選手が集まる。昨秋の県大会で優勝。センバツ出場こそつかめなかったが、夏の甲子園へ選手たちの思いは大きかった。そんな強豪私学の選手たちは、どんな思いで甲子園中止を受け止めたのか。

24日、グラウンドでは約2カ月ぶりの紅白戦が行われた。プロ注目の150キロ右腕、菊地竜雅投手(3年)が先発。3回3安打5三振で3失点。最速は145キロだった。ベンチからは1球ごとに「ナイスピッチング!」と元気な声が飛び交い活気にあふれた。菊地は「仲間と野球がやれて今日は楽しかったです」と笑顔を見せた。小さいころ、常総が甲子園で活躍する姿に憧れ入学を決めた。ユニホームを着て甲子園で活躍し、プロ野球選手になることが夢だった。「心も体も成長できた。常総学院だったから充実した2年間が送れたと思う」と悔しさを押し殺し、プロへの夢に気持ちを向けた。

常総の基礎を築いた木内幸男前監督は、日ごろからスタッフ陣に「ここにいるのは高いレベルの選手であることを前提に指導をしなさい」と話していた。高い目標を課し、選手たちを引き上げるための指導をする。3年生にも、甲子園を目指す厳しい練習を課してきた。スタッフ陣は「この子たちなら、どんな結果も受け入れられる」と信じて20日を迎えた。佐々木力監督(54)から選手への言葉はただひとつ。「野球を嫌いになるなよ」だった。

翌朝、選手たちは普段通り、朝9時にグラウンドに集合。「下半身を意識してピッチングをします」「しっかり振り込みます」など、その日の目標を大きな声で叫び、練習を始めた。強豪の何も変わらない日常。高い意識は根付いていた。石川光内野手(3年)は「強豪校に入学したからには、ここで学んだ野球を生かして次の道でも日本一を目指したい。それが強豪校であるべき感情です」と胸を張った。

茨城県は代替大会を開催の予定だ。石川は「どんな大会であれ、僕たちは頂点を目指す。負けてはいけない高校。それが常総学院のプライドだから」。そう言ってニコリと笑った。甲子園は中止になっても、自分たちがこの年、常総にいた証しを残す。必死に前を向き練習に励む選手たちを見て、佐々木監督は「こいつら、成長したなぁ」とつぶやいた。【保坂淑子】