宮城の県北から150キロ超右腕が現れた。大崎中央のエース氏家蓮(3年)は一冬越えて球速が大幅アップ。進路をプロ一本に絞り、第102回全国高校野球選手権(甲子園)と同宮城大会の中止に伴う代替大会に向けて、猛アピールに燃えている。6月の部活動解禁日に、自己最速を更新する151キロをマーク。全国的には無印の剛腕が夏の最高成績(8強)超えに導き、同校初のプロ野球選手の扉を開いてみせる。代替大会の開催可否は11日に発表される。

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急カーブを描く球速とともに、言葉にも自信があふれていた。氏家が昨秋から使用する赤色のグラブには、「華麗奔放」の刺しゅうが入る。「極めて華やかで、思うがままに振る舞うこと。マウンドでは自分のイメージ通りに振る舞いたいから」。落ち着いた声で、座右の銘に込めた思いを話した。

1年秋はエースで東北大会に出場し、初戦で青森山田を4-3の9回サヨナラで撃破。氏家は巨人ドラフト1位の堀田賢慎(19)と投げ合い、ともに完投で勝利した。一方、2年秋は県大会初戦で敗退。昨オフは朝晩と間食で約2・5キロの白米を摂取し、近隣施設を利用して筋力強化と水泳で肩の可動域を広げた。また、仙台市内のジムで初動負荷トレーニングにも挑戦。下半身強化の取り組みと走力メニューで足腰からフォームを固めた結果、昨秋時点で144キロだった最速は、3月に148キロまでアップ。練習再開日となった今月1日、球速などを計測できる「テクニカルピッチ」で151キロをマークするまでに成長した。

氏家の将来性を平石朋浩監督(33)は「直球の回転数は2500回転を超えて、プロ野球平均よりも200、300くらい多い。横で見ても速いですが、打席では伸びて来る。普段は謙虚で純粋ですが、マウンドに上がると人が変わる」と評した。アピールの舞台に考えていた春季大会や夏の大会は同ウイルスの影響で消えた。氏家は「甲子園を目標にしていたので、中止が決まった時は残念な気持ちでした。それでも、代替大会の開催を信じて、すぐに気持ちを切り替えた」と前を向いて練習に臨む。

進路はNPB(日本プロ野球)からのドラフト一本に絞る。指名漏れの場合は、家計を助けるために就職を第1希望に考える。「ピンチの場面でも負けずに抑えて、代替大会で優勝して、プロ野球選手になりたい」。幼い頃から抱く夢のプロ入りへ-。剛腕は強い覚悟とともに、飛躍の夏を待ちわびた。【相沢孔志】

◆氏家蓮(うじいえ・れん)2002年(平14)4月13日生まれ、宮城・栗原市出身。姫松小(現一迫小)4年時に一迫山王クラブで野球を始め、栗原西中では軟式野球部。2、3年時に栗原市選抜に選出された。大崎中央では1年夏からベンチ入り。同秋は県大会3位で東北大会に出場し、16強進出に貢献。171センチ、74キロ。右投げ右打ち。家族は父、祖父母、曽祖父母。好きな野球選手はヤンキース田中。

◆TECHNICALPITCH(テクニカルピッチ) アクロディア社が開発した投球練習用球。球の中に内蔵されたセンサーで球種や球速、回転数などが数値化され、連動した電子機器などに表示される。