ようやく、都立高校にも球音が戻った。

都教育委員会のガイドラインにより、15日から部活動の再開が認められた。ただし、1日の在校時間は6時間程度に限られる。昨夏まで2年連続東東京準優勝の小山台は、午後3時45分から、わずか30分だけ練習を行った。

東急・武蔵小山駅の改札から歩いて数十秒。アクセス抜群の同校で午後3時半、1日の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。ホームルームを終えた野球班員(※同校は「野球班」と名乗る)が小走りで校舎から出てくる。班室に駆け込むと、あっという間に着替えてグラウンドに集合した。

分散登校が続くため、この日の練習に参加したのは2年生33人の半分、17人だけ。3年生は模試で、1年生は正式な入班が、まだ認められていない。1限目は午前10時からなので、在校1日6時間程度を守るため、練習はわずか30分間。20メートルダッシュ2往復のアップを終えると、投手3人はダッシュをさらに続け、ブルペンへ。残りの14人は4グループに分かれた。

連続ティー打撃、ティー打撃、ノック、強化トレを7分ずつ。ローテーションで4セット、計28分間。あっという間だった。グラウンド整備を終え、午後4時19分、一列に並び、練習終了。再び班室へ駆け込み、素早く学生服に。同4時半には完全下校した。

慌ただしさが残る。福嶋正信監督(64)は「3年生がいない。みんなでやるのが練習だから」と苦笑いだった。2、3年生合同での練習は、29日から認められる見込みだ。あらかじめグラウンドに用具をセットし、スムーズに練習が行えるよう準備した。その時、グラウンドに雑草が生えているのを見つけた。「ふかふかしてるでしょう。ほとんど、人が入ってなかったから。グラウンドに草が生えるなんて」と、これまでならあり得ない状況からの再出発となった。

それでも、2月22日以来となる自校グラウンドでの練習が実現した。「ユニホームを着られただけでもいい」と喜びもあった。

上江洲礼記(うえず・らいき)主将(3年)は模試の間、2年生たちの練習の音が気になった。「英語のリスニング中だったので、本当は良くないんですけど(笑い)。ボールの音が聞こえ、やっと始まったなと。うれしいです」と笑顔。甲子園は中止となったが、東京独自の大会がある。「自分たちが精いっぱい頑張ることで、多くの人に希望や感謝を伝えられる。優勝目指して頑張りたい」と意気込みを語った。【古川真弥】