第102回全国高校野球選手権大会(甲子園)中止にともなう代替大会が、秋田県でも開幕した。昨夏8強の大曲は、骨折が完治していない手負いのエース田仲陽稀投手(3年)が139球の熱投。走者を常に背負いながらも粘りの投球で4失点(自責3)完投し、大曲農を6-4で破った。昨夏代表の秋田中央は13安打12得点を奪って男鹿工を圧倒し、夏“連覇”へ好発進した。

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大曲の最速141キロ右腕・田仲は最後まで腕を振り続けた。182センチの長身を生かし、角度のある直球と緩いカーブ、スライダーを巧みに操りながら8回まで無失点。「エースナンバーをもらっている以上は自分がいかないといけない」。9回2死から本盗や適時打で2点差まで詰められたが、1年秋からベンチ入りする自覚を胸に粘投した。

傷だらけの体で勝利に導いた。腰の疲労骨折など計3カ所を骨折し、いずれも完治はしていない。それでもエースとして痛みをこらえながら結果を残した。4回には苦手の打撃でも貢献。「バッティングは期待されていないので、初球のストレートを思い切って振っていこう」。左前適時打で試合を優位に進めた。

この日戦った大曲農とは定期戦を40年以上行い、OBの照井正喜監督(55)も現役時代に出場している。6月の対戦では6-12で敗戦。田仲は1イニングで6失点するなど大炎上したが、見事に修正し「打たれ始めるとメンタル面でダメージを受けてしまう。ダイノウ(大曲農)に定期戦で負けているので、チャレンジャーのつもりで投げた」。ピンチでも笑顔を貫き「甲子園がないのは残念だが、勝っても負けても楽しく野球がしたい」。仲間との時間を堪能した。

照井監督は田仲をたたえ「打に自信のあるチーム相手に丁寧に投げてくれた。前半0点に抑えたのが良かった」。夏の過去最高成績は13年の4強。新型コロナウイルスの影響で夏の風物詩「大曲の花火」は73年ぶりに中止になった。それでも地元大曲が県大会優勝という大きな花火を打ち上げる。【山田愛斗】

◆大曲農・吉田凌雅主将(3年=最終回に凡退)「ホームランなら格好良かったけど、努力してきたので悔いはない。後輩たちに古豪復活を託したい」