全国高校野球選手権の代替となる各都道府県の独自大会が12日、新たに開幕した徳島など各地で行われた。福岡は筑後地区大会の3試合などが行われ、九州各地を襲った記録的な豪雨で被災した久留米市の強豪、久留米商が朝倉に13-1で5回コールド勝ち。甚大な被害を受けた大牟田市など、県全域から中学生が進学する同校。親戚らが被災し、部員たちは野球ができる感謝を胸に戦った。

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久留米商ナインが、感謝を投打に込めた。

3回、1点を先制してなおも2死二塁。主将で4番・堤廉汰内野手(3年)の1発も、思いの表れだった。「最後はお世話になった保護者やOBにプレーで感謝の気持ちを伝えたかった」。憧れの西武森ばりに重心を低く構え、外角高め直球をフルスイング。公式戦2本目となる2ランを右翼席にたたき込み、ガッツポーズで生還した。

3回以降は毎回得点で5回コールド勝ち。堤廉主将は、1次リーグ2戦2勝に「この前よりバットがしっかり振れていた。みんな初球から思いきり行っていた」。先週は豪雨の影響で2日間臨時休校になるなど、練習できたのは11日の3時間のみ。この日も球場のグラウンドコンディションは悪かった。だが全員の意識は高く、集中していた。

中村祐太監督(33)は「(通学)エリアが広く、(甚大な被害が出た)大牟田市や浮羽から来ている生徒もいる。(久留米市の)城島や三潴の子は危険だった。久大線も止まったりがあったし」と明かした。親戚や近隣の被災で、不安を抱いていた部員もいた。だが試合にあたり「熊本とか他県では大会ができない所もある。(野球を)やらせてもらえることに感謝してやろうと伝えた。それもあって伸び伸びプレーしてくれた」と圧勝を振り返った。

次からは決勝トーナメントに突入する。堤廉主将は「負けたら終わり。内容にこだわらず、全員で勝ちに行く」。久留米商が地域の希望となり、頂点を目指す。【菊川光一】