<高校野球茨城大会:つくば秀英12-0つくば工科>◇18日◇1回戦◇笠間市民球場

全国高校野球選手権大会がなくなった今夏。球児たちはどんな思いで試合に臨むのか。直筆の手紙とともに随時掲載していく。

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つくば秀英(茨城)が12-0で迎えた5回。救援した次郎丸匡峻投手(3年)は、一塁側スタンドで見守る母和恵さん(47)を見て深呼吸をした。「お母さんが見ている」気持ちを静め、力強い真っすぐを投げ込んだ。打者3人を三振に仕留め、5回コールドで締めくくった。

1月9日。昨秋からリハビリを続けていた腰の分離症が完治し、これからという時だった。母の乳がんを知った。「夏は背番号1をユニホームに縫わせてね」。病気で苦しいはずの母の、気丈な言葉が胸に響いた。「活躍して元気にさせる」。練習に力が入り、春に最速140キロを計測した。

しかし、今大会の背番号は11。「1じゃなくてごめん…」。真っ先に母に電話した。願いをかなえられず号泣した。「何番でも関係ないよ。大会ができるだけいいじゃない」。母は優しい言葉で包み込み、11を丁寧にユニホームに縫いつけてくれた。「母を元気にさせる投球をしたい」。思いを手紙につづり、誇らしげに笑った。【保坂淑子】