夏季北海道高校野球大会は19日、函館地区を除く9地区で26試合が行われ、小樽地区では昨秋、15年ぶりに全道大会進出した岩内が小樽潮陵を14-7の8回コールドで下し初戦突破した。3番伊藤大真右翼手(3年)が8回、選手の相次ぐ負傷のため連続して2度臨時代走に出て、いずれも快足を飛ばし生還した。初回には先制弾、臨時代走直後の8回裏には2番手で登板し3人でピシャリ。まさに走攻守でフル回転した。

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伊藤がケガした仲間の分まで、走りまくった。8回2死、自身が中飛に倒れた直後に4番中西倖己捕手(3年)が死球を受け、治療の間、臨時代走として一塁へ駆けだした。すぐに二盗に成功。続く5番高井大輔遊撃手(3年)の左中間適時二塁打の間に50メートル5秒9の快足を飛ばし、本塁に生還した。

お役目はこれだけでは終わらない。今度は二塁に到達した高井の左太ももがけいれん。座り込んでしまった。ルール上、臨時代走は打撃を完了した直後の者だが、4番中西倖が治療中のため、生還したばかりの伊藤が“再臨時代走”。「臨時代走自体が初めて。2回も呼ばれてびっくり」。8回からのリリーフ登板に備えて投球練習を始めようとしていたが一端やめて、二塁へ。今度は6番丸谷駿輔一塁手(3年)の中前打で一気に本塁まで生還し、コールド勝ちにつながる14点目のホームを踏んだ。

「疲れましたが、ベンチに戻ったとき、みんなが笑って迎えてくれたので、うれしさも2倍でした」。初回にはバックスクリーンへの先制2ラン、2度の臨時代走を含めると2打点“3得点”。さらに代走直後の8回には2番手でマウンドに上がり、打者3人を9球で抑えて勝利を決めた。

15年ぶり出場となった昨秋全道大会初戦は、背番号1をつけ初戦の東海大札幌戦に先発登板。初回に3四球と暴投絡みで3失点した。その後、追い上げたが結果は3-6と敗れた。「秋はみんなに迷惑をかけた。弱気になったら打たれる。その反省を最後の夏に生かしたい」。初戦から打って走って投げての大活躍。ひと皮むけた背番号9がけん引役となり、まずは南大会を目指す。【永野高輔】

▽岩内・成田貴仁監督(39)「2度の臨時代走は想定外だったが、伊藤が笑顔で頑張ってくれた。チームとしては送球の部分で、まだ詰めなければいけないところがあった。次の試合まで1週間あるので、修正していけたら」

▽小樽潮陵主将・綿路悠真主将(3年=2ランを放ち7回でのコールド負けを阻止し)2週間前の練習試合は2-15で負けていた相手だったので、力は出し切れたかな。7回で終わらず、もう1回戦えたのがうれしかった。

▽小樽潮陵・中矢秀人監督(50)「主将の綿路もいいところで本塁打を打ってくれたし、1番の石沢快隼(3年)も2盗塁と足でかき回してくれた。コロナ禍でできないこともあったが、それはどこも同じ。とにかく選手全員が、粘り強さを表現してくれた」

◆臨時代走とは(高校野球特別規約より抜粋) 試合中、攻撃側選手に不慮の事故などが起き、治療のために試合の中断などが長引くと審判団が判断したときは相手チームに事情を説明し、臨時代走者を適用することができる。この代走者は試合に出場している選手に限られ、チームに指名権はない。

1、打者が死球などで負傷した場合

投手を除いた選手のうち、打撃を完了した直後の者とする。

2、塁上の走者が負傷した場合

投手を除いた選手のうち、その時の打者を除く打撃を完了した直後の者とする。

(参考)臨時代走者の記録上の取り扱いは、盗塁、得点、残塁などすべて元の走者の記録として扱われる。