ノースアジア大明桜(秋田)が第102回全国高校野球選手権大会(甲子園)中止にともなう代替大会で全国最速優勝を決めた。140キロ超えの右腕4人に注目が集まる中で、打線も13安打7得点で投手陣を援護。12打席連続無安打だった田中大夏(おおか)外野手(3年)が2安打3打点と活躍し、1年時から2年連続決勝で涙をのんだ悔しさを晴らした。投打とも充実した戦力で、8月9日からの東北大会(宮城県)に臨む。

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田中が不振を晴らし、優勝を決定づけた。4-2の7回無死一、二塁。外に逃げるツーシームを逆らわずに捉え、走者一掃の左前2点適時打でダメ押した。2回は左犠飛で追加点を奪い、5回には13打席目で今大会初安打となる中前打を打っていた。「打撃フォームは悪くなかったので、あとは気持ちの問題。チームの優勝に貢献できて良かった」と笑顔を見せた。

昨秋の県大会決勝は能代松陽に完封負け。田中も5回2死二、三塁の好機で凡退に終わった。敗戦後はひたすらバットを振り込み、毎日5箱(500球)のティー打撃でスイングスピードを強化した。悔しさを肥やしに一冬を越え、最後の夏に実現した同一決勝カードで雪辱を果たした。

甲子園大会中止発表を受けて輿石重弘監督(57)を中心にミーティングを行った。涙していた選手も、指揮官の「甲子園だけが全てではない」という言葉に、気持ちを新たにした。田中も「最大の目標を失って、精神的に結構きつかった。でも、立ち止まっても意味がないと。最後の大会でやり切ろうと思うようになりました」と逆境をはねのけた。準々決勝からは、地元の大阪から両親も泊まり込みで駆けつけ、決勝で3年間の集大成を披露した。

次の目標は「みちのく王者」だ。今大会は4人の剛腕を擁し、計42回で58奪三振、チーム防御率は1・50。投手王国を作り上げた。輿石監督は「秋田の高校球児が、つらい中でやってきた思いを全て背負って戦いたい」。参加44チームの魂を受け継ぎ、明桜ナインが次のステージに挑む。【佐藤究】