阪神やオリックスで活躍した野田浩司氏(52)の長男で、甲南(兵庫)の泰司朗(たいしろう)内野手(2年)が、マルチ安打で大勝の初戦突破に貢献した。

9番三塁で出場。流れを引き寄せたのは1点差に迫られた4回1死二塁だ。低めのチェンジアップをすくうとライナーで左翼頭上を越えた。適時二塁打を起点に4点を奪取。突き放した。

「しっかり引きつけて打とうと。何とか自分の1本で先輩に恩返ししたいと」

171センチと小柄で、まだ高校ノーアーチだが、この日は躍動感十分の2安打。2年生でも堂々と背番号5だ。岡山毅監督(40)は「期待の表れです。どんなことでも一生懸命。1桁番号を渡して3年生は誰1人、不服に思わない」と言う。

プロで89勝を挙げた父は95年に1試合19奪三振の日本新記録も樹立。快挙は映像で見た。「引退後に生まれた。ヤバイ投手」。自らも小学3年生から白球を追い、教えはいまも息づく。「小さい頃から『何でも全力で取り組め』と言われてきました。道具を大切にとずっと言われた。中途半端なプレーも怒られた」と思い起こす。

新型コロナウイルスで休校になると、父に「時間がある中で、自分が何をするか決めろ」と言われた。練習を継続し、ご飯中心の食生活で体重は4キロ増やした。試合前に「緊張するのは相手も一緒。平常心でいつも通りのプレーをするように」と助言された。泰司朗は三塁から何度も3年生投手に声を掛けた。「声は誰でも出せる。投手も安心する」。野球への情熱は父に負けていない。【酒井俊作】

◆野田泰司朗(のだ・たいしろう)2003年(平15)6月11日生まれ、兵庫県出身。神戸市立東町小3年から神戸トレジャーズで野球を開始した。太山寺中では小野ボーイズに所属し、父浩司氏にも指導された。昨年、1年夏から公式戦出場。アピールポイントは強肩で遠投は100メートル。50メートル6秒5。171センチ、70キロ。右投げ右打ち。

◆野田浩司(のだ・こうじ)1968年(昭43)2月9日生まれ、熊本県出身。多良木から九州産交を経て87年ドラフト1位で阪神入団。93年松永浩美との交換でオリックスへ。同年17勝で最多勝。95年4月21日ロッテ戦で1試合19奪三振のプロ野球日本新記録を樹立。00年限りで現役引退。通算89勝87敗9セーブ、防御率3・50。04年オリックス投手コーチに就任し、1シーズンで退団。現在はNTT西日本の臨時コーチを務める。現役時は186センチ、82キロ。右投げ右打ち。