高校最後の打席で、成城の主将、且元康治郎捕手(3年)は笑みが抑えられなかった。0-6の9回2死走者なし。「本来は使えなかったはずの神宮でできている。帝京相手に9回まで戦えた。レベルの高い投手3人(武者、柳沼、田代)と対戦できた。うれしいなあ」。視界を目に焼き付けた。東京五輪が行われていれば、神宮で試合をすることはなかった。甲子園もなくなったが、巡り合わせに感謝した。

176センチ、98キロの体で、パワフルな打撃を見せた。4回に武者から右中間を破る二塁打。すると、6回の第3打席で、武者に代わり柳沼を当てられた。捕ゴロに打ち取られたが、あの帝京が警戒してきた。9回の最後の打席は、左腕の田代が出てきた。1人だけ3投手と対戦できたことが幸せだった。

チーム方針で、練習メニューやベンチ入りメンバーは2人の副キャプテンと話し合って決めてきた。試合になれば、継投のタイミングも決める。「大変な時もありました。意見がぶつかったこともあります。でも、何が足りないかを話し合って、工夫しながら自分たちで決めてきました。ここまで戦えた。無駄じゃないなと思います」。敗れはしたが、充実感いっぱいの夏だった。【古川真弥】