誰よりもつらいはずの仲間の声援に背中を押された。鵡川のエース右腕、稲葉美徳(3年)は1度降りたマウンドに再び上がった。松葉づえ姿の星晴互投手(3年)がベンチで必死に声を出していた。「あいつはチームの一員。絶対に抑えようって思って上がったけど…」。同点に追い付いた直後の8回途中。無死から3点を許し、なお二塁に走者を置いた場面での再登板だった。

背番号10の星は靱帯(じんたい)再建手術からの復帰直後、大会を目前に再び左足半月板を損傷していた。試合前、稲葉は星から「任せたぞ」と託されていた。思いに応えたかったが、後続に4長短打を浴び、初戦突破を果たせなかった。

「鵡川で野球を完結したい」。最高のチームメートに出合った思いから、野球をやめることを決めて臨んだ夏。打撃では全力疾走で生還した中越えの3点本塁打を含む2安打4打点。最後の夏に足跡は残した。

▽7回に一時勝ち越しの適時三塁打を放った鵡川の山崎「みんなが託してくれた思いに応えようと思った。2打席全然ダメで、顔に泥を塗ってバカになってやろうと思った」。