4年連続で夏の甲子園に出場していた王者を追い詰めたが、勝利には届かなかった。

先発した加川航平投手(3年)は5回まで無失点に抑えたものの、終盤に5点を失い敗れた。加川は「途中まで勝っていたのに…」と、悔しさをにじませながらも涙はなかった。

父俊哉さんと二人三脚で成長してきた。群馬県内の強豪校・樹徳の球児だった俊哉さん。小さいころから2人はキャッチボールで数え切れないほどの時間を過ごした。加川がけがで右ひじを痛めた際、左投げ転向を促したのも俊哉さんだ。「どうせ投げられないんだったら左で壁当てでもしとけってね。遊びのつもりでやらせてたんだけど…」と、現在143キロを投げるまでに成長した息子の姿に驚いていた。新型コロナウイルスによる自粛期間中には久しぶりにキャッチボールをした。高校1年の冬以来だった。「高1の冬にやったときは球が速すぎて怖くてね。でもメガネをすれば見えることに最近気付いたんだ。久しぶりにできて楽しかったよ」と笑顔を見せた。

2人の練習で磨いてきた球がある。右打者への内角直球だ。一番自信のある球だった。しかし、王者相手には通用しなかった。自信のあったまさにその内角の直球を左翼スタンドに運ばれ、逆転2ラン本塁打を許した。加川は「ずっと練習してきた球だった。打たれないだろうと思って投げた。とても悔しい。今の課題です」と悔しさを押し殺し前を向いた。大学でも野球を続ける予定。父との練習の日々を糧に、次なるステージに挑む。【小早川宗一郎】