札幌第一が特別な夏の頂点に立った。9日、南北海道大会決勝で昨夏南大会準優勝の札幌国際情報を8-3で下し、夏は12年南大会以来の王者に輝いた。

新型コロナウイルスの影響で甲子園が中止。憧れの舞台がなくなり一時は方向性を見失ったが、独自大会に向けエース兼主将の山田翔太(3年)を中心に結束。負けることなく最後の夏を締めくくった。北北海道大会は10日に準決勝が行われる。

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札幌国際情報エース原田の最後のマウンドは79球で終わった。5回、札幌第一の5番高木を左飛に打ち取り2死とした時点で「1週間500球」の球数規定を超えた。2番手の2年生平川と交代し、左翼の守備に移った。公式戦初登板の後輩にマウンドを譲る際は「頼んだぞ」と声をかけ、後を託した。登板した時点で残り75球と限られていたが「球数を減らすことを考えるほどの余裕はなかった。いつも通り全力で向かった。やるべきことはやった。悔いはない」と、淡々と振り返った。

9回150球で完投した前日の準決勝、駒大苫小牧戦終了時点で425球。連投の疲れも抱えながら4回2/3被安打9、3失点。「何とかゲームをつくれたらと思ったが、ぽんぽん点を取られてしまい、流れに乗れなかった」。投げられない分、打者として3安打1打点と気を吐いたが、勝利には届かなかった。

昨夏の南大会決勝は2年生エースとして延長14回に及ぶ北照との死闘を一人で投げ抜くも敗戦。雪辱を期した2年連続の“南大会決勝”は、球数制限で最後まで投げきれなかったが、言い訳はしない。「控え選手も含めてチーム力。そういう意味では力がなかったということ」と前を向いた。

スタンドでは父卓見さん、母香織さん(ともに53)が観戦。前日夜は家族で夕飯をともにしており、卓見さんは「球数を気にせずに思い切って投げたらいいと伝えたら、本人もそういう思いだった。2年半、よく頑張った」。香織さんは「弱いところを見せない子。よく投げました」。両親への感謝の思いを胸に今後は、大学に進学し、悔しさを晴らす。【永野高輔】

○…原田に代わり5回2死から2番手で登板した札幌国際情報・平川が、公式戦初登板で1回1/3被安打1、無失点と好投した。「交代の時(原田)航介さんから『頑張れよ』と声をかけてもらった。航介さん以上のいい投手になって来年、甲子園に行けるように頑張りたい」と話した。16年夏の甲子園で準優勝した北海・平川敦監督(49)の次男。父はテレビで息子の投球をチェックしており「初めてにしてはよく投げていた。できれば対戦はしたくない」と話していた。

▽札幌国際情報・有倉雅史監督(53=コロナ禍で札幌の公立校は道内で最も遅い6月15日に練習再開)「大会までにやれた練習試合は8試合。なかなか他の投手を育てるのは難しかったが、1カ月半で何とかここまで来られた。原田は体力的にいっぱいいっぱいの中、気持ちのこもった、いいボールを投げていた」